※捏造クラスメイトと沢田綱吉 深く考えずお読みください
最近、「沢田綱吉」がやたら視界に入る。なんでだ。
一応クラスは一緒、でも会話らしい会話なんてしたこともなくて、他のやつらが「ダメツナってほんとダメだよなー」的な会話をしてるときに、
「ふーん」くらいにしか思ってなかった。
要するに、何とも思ってなかった。
ある日、俺は化学の教科書を忘れ、教室に取りに戻った。
そしたら沢田が一人教室にいた。机をごそごそしてる。
こいつ準備遅えなあ、と思いながら中に入ると、沢田がこっち見て「あ」と言った。
つられて俺も「あ」と言った。なぜか、しばらくぼーっと見詰め合ってしまった。
だんだんこの状況がおかしくなって、俺はニヤリ、としてしまった。
沢田はそれをみて、いっそう目を丸くした。茶色の瞳が大きく見開かれ、今にも零れ落ちそうだ。
「く、くふふ」
俺は笑い声を漏らし、最後には「あはははは」と声をあげて笑った。なんかウケた、おもしろかった。
なんだその顔。
沢田は一瞬顔を引きつらせ、そのあとボケーとこっちを見ていたが、はっとした顔と同時に「いや、そうじゃないだろ!」と突っ込んだ。
その突っ込みにまた笑いが出た。
「てゆうか、時間もうないよ、行こうよ!」
沢田が焦り顔で俺をせかした。
「あーちょっと待って」
俺は化学の教科書を机から引っ張り出し、「悪い」と言った。
移動中、沢田が「ねえ、いつもあんな風に笑うの?笑い上戸?」と聞いてきたから、「シュールな笑いは好きなほう、笑い方は意識したことない」と
答えた。
ふーんと気のない相槌を打ちながら、「『くふふ』って笑い方だけはヤメテ、ちょっとトラウマだから」とぼそっと呟いた。
それからだ。
なんか視界に入る。
俺たちは、実は席が近かった。今は、一番後ろの席の、一個置きに並んでいる。一個置いて左側。
時々、授業中にふと横を見ると、隣のやつは爆睡してて、その隣の沢田が黒板を見ている。
その横顔をぼーっと見ていると、沢田が俺の視線に気付く。
俺がニヤリ、と笑うと、沢田は少しだけ反応する。
初めはちょっと目を見開いた。次の時は、ちょっとだけ顔をしかめて。でもその次は、ちょっとだけ笑った。
そのにへら、とした笑顔、微笑み?に、俺はなんだか心臓があったかくなったのだ。
体育の時間とか、ちょっとした休み時間とか、沢田とはちょくちょく話すようになった。
っていっても、大抵は獄寺とか山本が沢田に絡んでて、俺も別のやつらと話してる。
そんな時、ふと、沢田の方に視線を移すと、絶対気付くのは獄寺だ。なぜか睨んでくる。怖ええ。
その次に気付くのが山本。山本は、なんか怖い「ニヤリ」とした笑いを向けてくるから、俺もニヤリと返す。
すると、目がちょっとだけ鋭くなるんだよな。こいつも怖ええ。
気付く確率が一番低いのが沢田本人だ。獄寺か山本の視線の先を追って、俺を見つける。
俺と目が合うと、ちょっと目を開いて、その後「にへら」と笑うのだ。ああ、温まる。
今日の2限は数学だった。「じゃあ次、沢田答えろ」教師がいう。
俺はボーっとしていたが、「沢田」っていう単語が耳に入ったので覚醒した。
沢田はあわあわと教科書を見、しばらく考え込んで、「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わかりません」と呟いた。
「ああ、なんだって?」教師が尋ねる。「・・・・・・わかりません!」ちょっと大きく響いた。
「まったく、オマエはいつも『わかりません』だな、ちゃんと勉強しろって言ってるだろー」教師も呆れ声だ。
周りからは、「へへ、ダメツナー」「万年補修ー」などど言った野次や、クスクス笑う女子の声が響く。
沢田はちょっと顔を赤くして俯いた。
大丈夫だって、オマエは出来ないかもしれないけど、ダメなやつではないぜ。
そう思った後、無意識に沢田を庇った自分にびっくりした。
その瞬間、沢田と目が合う。
琥珀色の瞳が、ゆら、と揺れたように見えた。どきっとした。
誤魔化すようにニヤリと笑うと、サッと視線を逸らされた。
・・・・・・・・・・・・・え、なんで?
昼休みが終わる少し前、沢田達が教室に戻ってきた。
沢田はそのまま席に着く。獄寺は「ちょっと失礼します!」と言ってどっか行った。トイレか?
山本は自分の席に戻りながら、なんか鼻歌を歌っている。
ちょうど間の席のやつがいなかったんで、俺はそのまま声をかけた。
「昼飯屋上?寒くなかった?」「・・・・・・・・・別に普通・・・」視線は合わない。
もしかして、さっきの「ニヤリ」、誤解された?馬鹿にされた、とか。
もやもやして、何となくポケットに手をつっこんだ。ら、何かが手に当たった。
(・・・・・・・・あ、チロル、)一個だけ。
「これ、やる」投げたそれは、見事に沢田の机の上に着地した。
視界に突然現れたチロルにビックリしている沢田をみて、ちょっと満足した。
「・・・・・・・・・・・・さっきさ」
「え?」
「馬鹿にされた、って思ったんだよ」 やっぱり。
「・・・・・・・・・・でも、いつもだったら、あいまいに笑って流すんだけどさー、なんか拗ねちゃったよ」
「・・・・・・・」
「でもよく考えたら、笑い上戸だもんな」
「そうか?」
「だって、目ぇ合うとき、絶対笑ってるもん」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうだっけ」
「うん、そう」
「ふーん」
「でも、嫌な感じはしないけどね」
「・・・・・・・・・・ふーん」
「オレもなんか笑えてくる」
「・・・・・・・・・・へーえ」
「オマエ変なヤツだよなあ」
「沢田さ」
「何」
「何で俺には拗ねんの?」
「・・・・・・・・・・・・さあ?」
「・・・・・・・・・・・・ほーお」
「にやにやしてるよ」
「気のせい」
予鈴がなった。