ゴウンッ。
風の唸りが、シェルターの中に振動を伝える。
厄介だな、と綱吉は思った。そこまで大きな衝撃を与えられるほどの武器を所持しているってことだ。
グローブを嵌めたままの手のひらを、ぎゅっと握り締める。無事だろうか、俺たちのファミリーは―――
ガンッ!
「いッ!―――だァァァ!!!何すんだバカ!」
「いやなんか、イラッとしたから」
しれっと答えた青年。綱吉はげんなりした。シリアスな雰囲気がぶち壊しである。
「もう、もたねーな」
「………………」
「ドン・ボンゴレ、辞世の句はあるか?思い出のために碑を建ててやる、夕陽が美しい断崖絶壁のてっぺんにでもな」
「縁起でもないよ!てーか殺すな!絶対生きて帰ってやるからな!」
ニヤリ。リボーンは不適な笑みで返す。この青年はいつでもどこでもこうだ。その余裕さが頼もしくも有り、時には綱吉に劣等感を植えつける。
「………くっそ…」
「大丈夫だよ、君には僕がついてる」
「何キャラ!?」
「オレは永遠の18歳だ」
「意味わかんねーよ、てかお前まだ18じゃねーだろ」
ばかなことを言い合ってるうちに、目の前の巨大な扉がミシリッと音を立て始めた。
いよいよか。
いけるか、終わるか。
何にせよ、二人しかいない状況は変わらない。
静かに覚悟した綱吉の横で、リボーンは囁いた。
「………………ところで、ツナ」
「なんだ、こんなときに」
「こんな時にアレなんだが、大事な話がある」
「………お前、TPOって言葉知ってるか?トイレならとっとと…アッすいませんごめんなさい僕が悪かったです」
「空気読めドカス」
うわ、泣きそう、と呟く綱吉。どっかの恐ろしいオッサンを彷彿とさせる台詞だ。
ボスのこめかみに銃口を当てたまま、リボーンは静かに喋りだす。
「………………実はな」
「………………………………」
「俺、あと10日の命なんだ」
「夕べ見たドラマだろーがァァァァァ!!!」
綱吉は思わずちゃぶ台をひっくり返した。
「………お前、そのちゃぶ台どっから生えた?」
「こんなときのために携帯していた折りたたみ式」
えっへんと胸を反らす綱吉。偉そうに言うな、と思ったが、リボーンは突っ込まなかった。
「このクソ忙しいときに衛星放送観やがって、……特訓してもらえばよかった…………」
「黙れ」
ズガァン!
「!!!ちょっ、お前、何撃ってんだァァ!!?し、死ぬだろ」
「………チッ」
「リアルな舌打ち止めて!本格的に泣くから!」
ミシミシッという音がだんだんと大きく耳に聞こえ、慌てて正面を向く。
何でこう、緊張感が続かないんだろう。
「ところでな」
「………何だよ」
「本題に入る」
「まだあんの!?何なんだよいった」
「好きだ」
「………え?」
ッドゴォォォォォン!
轟音が全身を襲った。
呆然と自分を見つめる綱吉に、ふ、と笑みを返して、リボーンは煙立つ暗闇の中へと歩いていく。
「……え?え、……ええ?」
暗闇で聞こえ始めたボゴッ!だのゴスッ!だの乱暴な音。
「おいコラツナァァァァ!!!とっとと来やがれ、この万年ドチビ!」
「―――うるっせェェ!」
(十数年前は赤ん坊だったお前に言われたくねえ!)
真っ赤な顔をぶるるっと一振りし、綱吉は駆け出した。
背を預かるために。預けるために。
ドゴッ!ズガスッ!
「あーいーしてーるぅぅぅ!!!」
バシュンッ!ドガァァン!
「やめてェェ!何この精神攻撃ッ!!」
ゴシュッ!バゴォォン!
「真っ赤だなァァかーわいいぞー!」
ドゴォォン!バガァァンンン!
「てめっ死ねゴラァァァ!表出ろやァァ!!」
まさに、死屍累々。
「…………なんだ、こいつ、ら……」
最後の一人がばたりっと倒れたその傍ら、破壊音は益々大きくなっていった。