放課後の教室、夕陽が差し込むあまやかな場景。
「・・・・・・ん、」
触れた唇を遠ざけると、少女は頬を赤く染めた。潤んだ瞳を眺めながら、リボーンは腰を抱いた。
少女の体はとても簡単に、己の中に包まれる。笑いたくなった。
自室で雑誌のページを捲っていると、小さいノックの音が響いた。
(来たか)
「リボーン、入ってもいい?」
「ああ」
遠慮がちに顔を覗かせた少年の瞳は翳っていた。目尻が赤い。
(・・・・・・・・、泣いたのか)
「あのさ、」
沈黙が落ちる。リボーンは心の中で、ずっと呟いていた。
(お前が悪い。お前が悪い。お前が悪い。お前が悪い。お前が悪い。お前が悪い。お前が悪い。)
「・・・・・・用が無いなら」
「笹川さんのことなんだけど」
思ったよりもしっかりとした声に、リボーンは少しだけ怯んだ。
「付き合うの?」「ああ」
即答され、綱吉は一瞬だけ固くなった。が、徐々に肩を下げてゆく。
「・・・・・・・・・・・そっかあ、」
よかったね、と囁かれた乾いた言葉は宙に浮き、リボーンの心臓を一突きにした。
見られていたことは知っていた。それを綱吉も気付いていた。俺たちは二人でひとつなのだから。
どこから絡まってしまったのだろうか、とぼんやり思った。
少女を胸に引き寄せても、目は茶色の頭が隠れていた廊下の方ばかり見ていた。
本当は、盗ろうとするつもりなんてなかったのだ。聞いてはいないが知っていた。純粋に、兄の恋を応援しようと思ったのに。
お前が悪い、と、大人気なく、でも本気で思った。
いつの日か、笹川京子を目にしたときの綱吉の表情は、本当に穏やかで。偶々に隣でそれを見たリボーンはその瞬間、周りの音が全て止んだのを感じた。唇を噛み締めた己に、双子の片割れは気付かなかった。
心臓が軋んだ理由は、考えないようにしようとしたのに。出来そうに無かった。
お前の足をもぎ取って、机の引き出しの奥にしまって。お前の心臓を引き千切って、俺の腕に巻きつけて。
泣き叫ぶお前に、首輪をつけてしまえばいい。
俺を見ないお前なんて、壊れてしまえばいいと思った。
綱吉が部屋を出て行った後、リボーンは震えだした携帯電話を開いた。
ディスプレイにはメール受信一件、の表示。差出人は笹川京子。
彼は衝動的に、携帯電話を壁に投げた。
ガン、と音を立てて、小さな機械は床に落ちた。