ひどい雨だ。昼前までは小降りだったはずなのに、今は地面に叩きつけるように降って、落ちてゆく。

綱吉は空を見上げたが、どんよりとした灰色は一層気分を滅入らせるだけだった。

(間に合うかなあ)

一時間後にはバイトのシフト時間だ。遅れたりなんてしたら、あの店長はまた嫌味を言うんだろう。

更に重くなった心に比例するように、雨足もひどくなってきた。

 

 

ぼんやりと視界に入ったポールの陰から、突然人が出てきた。

綱吉は思わず顔を逸らし、隣のベンチに腰を下ろした男をチラッと見た。

背が高い。一瞬だけ目に焼き付けた横顔は端整だった。

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

びたんっ。

屋根から落ちた雫がアスファルトにダイヴした。

 

 

ふう、と息を吐いた音が耳に入る。少しだけ顔を動かすと、灰色のなかの白い靄。

(・・・・・・・・・・・あ、)

 

生まれた白い息は、空気にとけてゆっくりと消えていった。

 

 

綱吉は真似をしてみた。こっそりと吐いた息がたちまちに白くなっていくのを見た途端、ほんの少し気分が良くなった。

 

 

 

 ぽわん、

 

        ぽわん、

 

   ぽわん、

 

 

 

 

雨の足音が、少しずつ遠ざかっていく。

離れたところから生まれる靄を見ながら、ぼんやりとバイトのことを考えた。