「ねえ、思うんだけど」「黙れ」

十以上年下の少年に一刀両断され、綱吉は落ち込んだ。リボーンは無視して黙々と書類に目を通している。

部屋の真ん中にリボーンは座り込み、その周りには書類が散乱していた。

ちなみに、綱吉の机の上には三倍以上の紙切れが積まれている。

深夜二時過ぎ。ちなみに徹夜三日目。膨大の書類に囲まれながら、綱吉は己の運命を呪った。

書類を捲る音が、静かに響く。

綱吉は目の下に真っ黒な隈をつくりながら、「死ぬ気」ってなんだろう、とぼんやり思った。

やばい。ちょっと、このままいくと本気で死ぬかも。

「しぬ」「死ね」

律儀に皮肉を返す少年を眺めながら、綱吉はずるずると机に突っ伏していった。

「しぬ・・・」

頬にあたる冷たい木の温度が、今はやけに心地よい。瞼の奥の白い光が、ゆっくり消えていった。

「おい、起きろ。ダメツナ。ダメボス。俺だって寝てねえんだぞ。おい。聞いてんのか。ケンカ売ってんのか。よし買った」

綱吉とおそろいで目の下に隈をつくったリボーンは、立ち上がって机の後ろに回りこんだ。

思い切り頭を引っぱたく。綱吉は起き上がる事無く、弱々しい唸り声をあげた。

「りぼーん。おれはもうだめだ。ねかせろ」

「寝かせるか」

リボーンは綱吉の首筋にスルリと手を突っ込んで、そのまま思い切り締め上げた。

「ぐ!う、だめ、ばか、それ、し、」

「綱吉、起きて!アタシたち、約束したじゃない!死ぬときは一緒だって!」

裏声で叫びながら綱吉の体をがっくんがっくんと思い切り揺さぶるリボーンは、明らかに尋常ではなかった。

だが綱吉は得意のツッコミを入れることすらできず、抗議の声は段々と聞こえなくなっていった。

加減無き一撃により、違う意味で昇天したのだ。

口から何か色々出しながら白目を剥いている綱吉を放り出し、リボーンはふと思いついた。

 

 

 

 

 

光溢れる部屋の中、風がカーテンを泳がせている。眩しいほどに白い色に囲まれている部屋の扉を、獄寺は思い切り開けた。

「十代目」

獄寺が、囁いた。その声は、広い部屋に溶けて消えていった。

色とりどりの花に囲まれながら、綱吉は静かに、ベッドに横たわっていた。胸元で組まれた両手は異常に白く、獄寺は呆然とその場に崩れ落ちた。

「なぜ」

「過労、だそうだ」

ポツリと呟く山本の肩は、僅かに震えていた。

「じゅうだいめ」

獄寺は、綱吉の傍へ、恐る恐る近付いた。膝をつき、戸惑いながら、今にも倒れそうになりながら。

「さわだ、さん」

綱吉は目を閉じたまま、獄寺の呼びかけにこたえることはなかった。

「さわださん・・・・・・・・・・・」

獄寺は、シーツを握り締めたまま、頭を垂れた。強く固めた拳から、赤いものが伝っていった。

 

 

「おれ、言えばよかった」

 

「あなたがずっと、好きだったんです」

 

獄寺は泣きながら、十年間胸の内に秘めていた想いを吐き出した。

「ずっと、あなただけ、だったんです」

 

 

 

山本は、何も言わずに壁に体を預けていた。手で口を押さえ、ブルブルと震えは段々大きくなっていたが、獄寺が気付くことは無かった。

「つなよしさん・・・」

ベッドから「んごっ」といびきが聞こえ、耐え切れずに山本は吹き出した。が、獄寺の耳にはもはや何の音も入らないようだった。

 

 

 

 

今年のターゲットは獄寺