「ツナくん!」「!!!」

門を通り過ぎようとして振り向いた綱吉は、あっという間に音を立てて真っ赤になった。

世界で一番可愛いとさえ本気で思えるほどの女性が立っている。

「今、帰り?」「ううううううううんそうそう」「今日、花は用事あるんだって。途中まで一緒帰ってもいいかな?」「!!!!!、よ、よよよろこんで・・・・」

「笹川さんがダメツナに話しかけてる!」「ダメツナ超どもってる!さすがダメツナ」

明らかに賛辞ではないどこからかのヒソヒソ話も全く気にならない程。女性は青年の想い人であり、この二人は正反対の意味で大学内ではそれなりに有名であった。

「きょきょう京子ちゃん、プレゼン」「あっ今日の講義?恥ずかしいなあ・・・」「凄かったよ、超上手かったよ!!オレ、感動した」「えへへへありがとうー」

などとほのぼのな空気を醸し出していたのだが、交差点の角を曲がったところで綱吉の顔色とそのオーラが百八十度変わった。

「!!!!!!!」

「ツナくん?」

どうしたの、と傍で聞く柔らかな声も脳みそを通り抜けどこかへ飛んでいってしまう。

段々と近付いてくる金髪頭の足音はまさに恐怖の道程のカウントダウンであった。

「ごっ、ごめん!ちょっと急ぎの用を思い出して・・・・・・!」

「えっ」

「ままま、また明日・・・・・・・・!」

脱兎のごとくその場をさる綱吉。比喩で無しに、涙が風を切って流れた。目指すは一直線、目の前のタイミング最悪男の元であった。

 

 

 

「ちょっと!!」

「な、なんだよ」

ずいっ、と迫る小さな顔に、思わず一歩後退。強気な態度はどこか遠くに居る父親だけに見せるものだとばかり思っていた。ので、いきなりメンチを切られるとは想像だにもしない。

「アンタ昨日の今日でまた来たんですか!しかも今、どこに行くつもりだった!?大学まで来ないで下さいよっ」

「払わないテメーが悪いんだろ」

憮然と返す男に、綱吉は激昂した。

「こっちにも付き合いってもんがあるんだよ!こんなん見せられるわけねーだろ!」

「さっきの女か」

ピタリと閉じられる口。思わずニヤリと笑う。

「ふーん」

「・・・・・・・・なんだよその目」

「中々。いい女だったじゃねーか」

「!!!、おい、あの、あの人はオレと何の関係もない・・・・・・・ことはないこともないけど、ととと友達なので、あの手は出さないで」

「出すかよ馬鹿馬鹿しい」

へっ、と馬鹿にしたように笑う男の傍をキレーなお姉さんたちが色めき立ちながら通り過ぎていく。

(何だか説得力が無え・・・・・・・)

「立ち話もなんですから、どっか入りましょう」

「なんだ積極的だな」

「おごってください。オレ金無いから」

「・・・・・・・・・・・」

綱吉は太い腕を引っ張りながら店を物色し始めた。

どうせ長い付き合いになるのだから、それなりに友好を深めておいた方が得策に違いない。

そう開き直る彼は、元来諦めが早い性質であった。

それに、取立てる対象の相手に引っ張られながらもそのままにされている男は、きっと良い人に違いないのだ。仕事絡みでさえなければ。

己の勘は良いほうだ、と自負している。

「あっ、あそこはどうですか?『秋のスイーツ丸かじりフェア』だって」

「・・・・・・・・・・・・・・・」