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軍部パラ。所属は適当。人道支援のため海外派遣されたコロネロと綱吉。コロネロがベテラン上官、綱吉は新米直属の部下。

 

 

 

 

 

頬の横を指先が掠める。かわし、下から掬い上げるように拳を振り上げた。

だが手ごたえは無い。一瞬後、腹に衝撃を感じた。視界が渦巻く。巻き付く腕に手を添えた後、グローブから思い切り炎を噴出した。

地面に手を付き、体制を整える。間合いを置いて突きつけられた鈍く光る銃口を認め、すばやく右に飛んだ。

 

「チッ」

「クソッ」

 

ビュオオオオ・・・・・・・・・・!

 

一陣の風が吹いた。

距離を取って対峙する、金髪碧眼男の美しい髪が、サラサラと揺れる。

負けじとこちらも髪をなびかせていた。生憎、つんつんと逆立った髪が出す音は『サラサラ』なんて美しくは無く、『みよんみよん』と妙な効果音をはじき出していたのだが。

金髪碧眼男――コロネロの先に見えるのは、艶やかな女性たちの群れ。何時の間にか群れだした外野である。

恐らく近くの村に住む若き乙女たちは、頑張ってェだのカッコいィだのこのチンクシャだの地味顔だのってアレ、後半明らかにオレに対する罵声・・・・・・・?

綱吉は顔を引き攣らせながら髪を撫で付けた。チンクシャは無いと思う。もう二十代後半である。

 

「いい加減にしろ」

 

澄み切った青に静かな炎を滾らせ、コロネロは呟いた。思わず呻いた。悪いが正直、こっちだってブチ切れている。

昨日まで(一見)普通に、ごくふつーに生活を共にしていたはずの同僚。綱吉の中では『尊敬できる先輩』、そして相手からは『信頼できる相棒』だ、とまで言ってくれたはずだったのだ。

幅広い範囲で凡ミスを繰り返す自分にも優しく声をかけてくれた上司。そして派遣が決まったとき、直属の命と共に優しくかけてくれた言葉。『お前なら出来る』。自分を認めてくれる、数少ない人だ、と、胸の中が熱くなった。

その時の光景を綱吉は思い出していた。滅多に笑わない彼が、少し照れくさそうに口の端を上げて、自分の頭を撫でてくれた。

 

(――――、それなのに!)

 

 

「いい加減にしろ」

「どの口で言ってんの!?」

憤りが脳天を直撃した。何なんだ。何なんだ、あの男。綱吉は羞恥によりぶるぶると震えた。

だがコロネロはさらっと流し、一歩、歩み寄る。綱吉はその分、後退した。

ピクリと頬を引き攣らせ、口を歪めながらも歩みを止めない男の姿―――憤りだけと判別するにはちょっと怪しげな雰囲気である。

「大体なァ・・・・・・俺は相ッッ当耐えたんだ・・・・・・」

「ちょっ、来ないで下さいっ」

「・・・・・理不尽だ・・・・・・・・有り得ねェ・・・・・・何だってこんなチビで貧弱な童顔男・・・・・・・」

「キモッ!退散!悪霊的な何か退散!」

足を進めながら、弁解のように、そして恨み言のようにぶつぶつと呟く様は見れたもんじゃなかった。ギャラリーのお姉様方も上げていた黄色い声をすっかりと潜め、若干腰を引きながら見守っている。

そしてコロネロは叫んだ。

「本部で当直時の仮眠室、寝ぼけて俺のベッドに転がり込んできた事件!シャワーに誘いあまつさえ隣に並んできた事件!寝言で俺の名前を三回も呟いた事件ッッ!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・何で真っ赤なんスか」

若いという証拠である。鼻息荒く綱吉を指差している年下の上官(年齢差十歳)。目は血走っている。

直視できなくて顔を逸らしながら理解しようと必死になるも、残念ながら綱吉には全く飲み込めない。

それくらいの理由でまさかあんなところ(御想像にお任せ致しますな場所だ)に、あ、あんな・・・・・・・!何たる理不尽!

「ケツに指突っ込んだだけじゃねーか」

「言うなァァァァァァァァ!!!!!」

トラウマ確定である。

綱吉はグローブを嵌めた手を握り締めた。もはや視界など、目に溜まった涙に奪われていた。