綱吉は最近、無性に逃げ出したくなる。

そういうわけにも行かないので(行動として逃げることは一番の楽になる方法だったが、近頃彼は『逃げる』ことにより惨めさ・虚しさを

実感すると知った)、彼は知らないふりをする。

時には笑ってみたり、時には流してみたり。

これも『逃げ』だ。だけど、他に方法を知らないから。

それでも彼は自分に、接触を図る。

なぜだ、わからない。

こんな平々凡々な顔立ちで、何をやらせても平均以下の結果しか出せない自分の、何に、彼は興味を示しているのだろうか。

「ねえ山本」

「ん、どーした」

「やまもとは」

言葉が続かない。たった今、親指の腹で唇をなぞられた。ここ数日、儀式のようにそれは行われていた。

体の中で何かが疼いたのは気付かないふりをして、綱吉は笑う。

「なんでもない」

「変なツナー」

山本は笑う。だけど、苦しそうに。

ねえ、何が苦しいの。なんで、そんな風に触るの。なんで。何を、言いたいの。

ふとした時に掴まれる腕、転びそうになった時に支えられた体、二人になった時の、どこかおかしな、それでいて濃密な空気。

オレは、理由を知っているのだろうか。山本は、理由を教えてはくれないのか。

オレたちはこのまま、

 

 

 

夢を見た。

オレと山本は二人で夜の公園にいた。星がとても綺麗で、隣に座っていた山本が子供のようなキラキラした目で空を見上げていた。

オレはそんな山本の目に見惚れていた。

(山本の目から、星が溢れてきそうだよ)

手を握ると、山本は嬉しそうに笑う。オレも嬉しくて笑う。二人は笑って空を見上げた。

 

 

 

オレは、どうしたいんだろう。山本に、何をしてほしいんだろう。

ただ、夢の中で握り締めた手の感触が、まだ残っているような気がした。

山本の手。

握ったら、どんな顔をするのだろうか。

知りたいな。

 

綱吉は微笑んだ。