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「ねえ、『ディーノさん』は?」
「あー、アイツは星になった」




綱吉は一気に顔を青褪めさせ、リボーンをがくがくと揺さぶった。

「お前ェェェェ!!もう、殺しは止めるって言ったじゃん!しかも依頼主を殺っちゃうなんて、なんて、なんて男だァァァ!!」
「冗談だ」
残像を残しながらも無表情で言う男に、綱吉はげんなりと肩を落とす。コイツの冗談は冗談に聞こえない。
「アイツは遅れてイタリアを発つそうだ。俺たちが依頼されたのは『日本』での護衛、楽しみはとっとけ、ってな」
どうでも良さそうに話すリボーンに眉を顰めるも、綱吉はいそいそとシートベルトを閉めた。
『ディーノ』なる人物に非常に興味があるのだ。リボーンの話によると『ドジで間抜けだが部下思いのヤツ』らしい。
綱吉は親近感と憧れを抱いた。親近感は主に『ドジ間抜け』に反応したのだが。

そんな綱吉を横目でチラリと一瞥し、リボーンは窓に目をやった。イタリアの大地は、もうすぐ遠いところとなる。
「チャオ。また会う日まで、だな」
「ね、機内食何喰う?」
「―――情緒が無い!」
わくわくと問いかけてきた隣の男にズドスッッ!とチョップをかまし、リボーンは再び外を眺めた。
顔が一瞬にして福笑いになった彼には構わず、無駄にキメた横顔に、見ていた機内の女性がほう、と溜息を漏らした。

「そして―――待ってろよ、ジャッポーネ」
「―――――――!!!(こいつ、いつか潰す!)」






「あーあ、予定が…」

「黙れ、この優男」
チャッと銃口を向けられ、ディーノは口を閉じた。ホテルの一室、部下が周りにいないのがまずかったと思うも時既に遅し。
いきなり黒ずくめスーツ集団が押し入ってきた時、反応できなった己が情けない。
『元』家庭教師に知られたら殺されるな、と、思わず背筋を冷やした。
「ボスは何処だ?」「もしかしたら逃げられたのかもしれん」
(おーい、こいつら本気か?)
キャバッローネの跳ね馬を知らないその筋の人間は、イタリア全土を探しても居るわけが無い。
それに、この言葉は―――

「――ボスッ!」

部屋に駆け込んで来た男は、腹心の部下の一人、ロマーリオだった。
己に銃口を向けていた男の額に、彼が銃痕を残した。それを視界の端で捕らえながら、ディーノは反対側であっけに取られていた男に足払いを掛ける。鞭をびしりと真横に引いて微笑んだ金の美丈夫に、黒ずくめの男は戦慄した。

「わ、悪かったこの通り!」
「謝ってすむならマフィアはいらねーなァ」
「ボス、ちょいと間違ってるぜ」
ボソリと呟いたロマーリオを無視して、ディーノは顎に手を掛ける。
男がなぜか僅かに頬を染めたのには気付かず、顔を寄せて睨みつけた。
「テメーら、ジャッポーネのヤツらだな?誰の差し金だ?」
「な、な、」
「オラ、しゃべれんだろ?可愛いお口で言ってみろ」
「サドだ…」
しかも敵は心なしか喜んでいるように見える。
「この分だと、あっちも穏やかには済まなそうだなァ」

渋く目を細めて天を仰いだおっさんの言葉は、向けられた彼らには届くことは無かった。









「やっぱな、絶対何かあるとは思ったんだ…」
「テメー気付いてたら言えこのサイヤ人め」
「よーしそのケンカ買ったァァァ!」
「うるせえぞ!!」

黙った男たちに鼻息を鳴らし、覆面男の一人がくるりと背を向けた。手にはライフル。
その背に思い切り舌を出した綱吉を、リボーンは呆れ顔で見た。

周りには怯えた乗客と、これ見よがしに銃を見せ付ける覆面男たち。いきなり現れた彼らは、どうやら貨物室に潜伏していたらしい。あまりの『いかにも』感に思わずぼけっとしてしまった二人をよそに、彼らは勢いよく叫び出した。

「この飛行機はたった今から、俺達の支配下だァァ!」




「頭悪そうだよな」
「こらっ、聞こえるって」
ひそひそと話し続ける彼らを、前席に座っている少女がこっそり覗いていた。目には涙を浮かべている。
そりゃそうだ、と綱吉は思う。普通ならこの状況、恐ろしいに違いない。自分も少し前まではそうだった。今やもう慣れた。擦れたとも言う。
「大丈夫だよ、何とかなるかもしれない」
こっそりと話しかけると、少女は目を見開いた。青い目が涙に濡れてキラキラと輝き、綱吉は微笑んだ。
こっそりと、拳を握る。
嫌な予感がしたのは、実はつい先ほどだ。ヤツらが乗客室に入ってくる、ほんの五秒前。己の勘は全く当てにならない。
くそ。結局、今ここに居る人達を、危険に晒している。ダメツナめ。

リボーンは何も言わなかったが、綱吉に再びチョップをかました。
「いっ!・・・・・何なんだよ、さっきから!」
「ヘコむ暇があったら状況を打破すべく努力しろ。さ、出番だぜ」
綱吉は黙った。こういうところ。本当に、コイツは。

「リーダーを潰すぞ。場所は?」
「操縦室。一番大柄なヤツ」
「何が目的だ」
「ゴメン、そこまでは」
「先に行く。援護しろよ」

僅かな時間の間での、言葉の応酬。
徐に立ち上がった一人の色男に、全員の注目が集まる。

「何だ、テメエ?」
僅かに怯みながらも威嚇してきた覆面その一に、彼は妖艶な笑みを向けた。