心臓が喋った。いや、マジで。

朝起きたら左胸が膨らんでいた、推定Aカップほど。

あれ、オレって女の子だったっけ。眠い頭で一瞬思ったが、脳は瞬時に覚醒した。

「うおおおおおお!???」

「うっせーぞダメツナ」

パシュン!

ハンモックから銃弾が飛んできて、命惜しさに両手を口に当てた。

だけど心の中は悲鳴でいっぱいだ。

恐る恐るパジャマを捲ってみる。

右胸、いつもどおりペッタンコ。

左胸、・・・・・・・・・・・・・・・・・膨らんでる。ちょっと。なんだこれ。なんだこれ。

「りりりぼ、リボーン、」

「黙れ」

ズガン!

ダメだ、この赤ん坊は。

寝起き最悪な家庭教師をほっぽって、綱吉はいつもの三分の一の時間で着替え、朝ゴハンも食べずに

家を飛び出した。

向かう先は、並中内保健室。名医の元。










「助けて!」

「俺ァ女の子しか診ねーっつったろ、帰れ帰れ」

綱吉は怯まず喰いかかる。この男と話すときはある程度の根性が必要だ。

「オレの、胸が、む、むね」

「胸ェ?」

ガバッとシャツを捲ったその下、異様な光景にシャマルは目が点になった。

「・・・・・・・・・・・・お前さん、女の子だったの?」

「揉むなァ!!わかんないんだよ、朝起きたらこーなってて、しかも左だけ」

変態さんの腕を振り払いながら、綱吉は涙目で叫んだ。

シャマルは右手をわきわきさせながら考え込むそぶりをするが、視線は左胸に釘付けになっている。

「や、こーしてみると、なかなか・・・申し訳程度なサイズと薄桃色の果実が」

「気持ち悪いこと言うなァァァ――――!!!お願いします、元に戻して!」

『うるせえな、』

「うるさいってなんだよ!人が必死で頼んでんのに」

「は?俺何も言ってねーぞ」

『騒ぐんじゃねー、ダメツナ』

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「どーした?」

シャマルは不思議そうに綱吉を見ている。

綱吉は全身がひやりと冷えたのを頭のどこかで感じながら、左胸を見やった。

「しつれい、しました」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんだアイツ」

呆気にとられたシャマルを残し、綱吉は静かに保健室を去った。










「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・気のせいだよな」

『逃避すんな』

「やっぱり何か喋ってる―――――――!」

半泣きで左胸に手を当てようとし、やめる。

「お前、何?」

『心臓だ』

「は、」

『右にも脂肪を付けようかと思うんだが』

「えええええええ!!!やめて、頼むからやめて!」

『脂肪が有った方が安心するんだが、気分的に』

「気分で胸が膨らんでたまるか!!・・・・・・・・や、ホント勘弁・・・・・」

押さえながらずるずると座り込む。

授業はまだ始まらない。人気のない廊下はひんやりとしていた。



「・・・・・・・・・・・・・・・・なに。なんで、喋ってんの」

『何でだろうな』

「わかんねーのかよ!」

『まーいいじゃないか。友達が出来て』


「・・・・・・・・・・・・・・・・お前、ホントふざけんな・・・・・」

『イイコトあるかも、だぞ』




顔があればニタリと笑っているだろう。

生憎、主は顔面蒼白だったけれど。