それは、いつものことのようでめったに無いことだった。

 

綱吉が当たり前のように補習宣告をされて放課後の教室に一人きり。

終わった頃、タイミングよく現れる幼馴染。

帰り道、土手に座ってのんべんだらり。

いつも通り。

 

川は静かにたゆたい、その水音はひっそりと、心地よく響いていた。

「グリーンフラッシュって知ってるか」

「・・・・・何それ?」

「太陽が沈む瞬間、緑色の光が見える現象」

「へー!緑?」

「見える確率は低いけどな」

ふうん、と相槌を打ちながら、綱吉は太陽をじっと見詰めた。

 

ゆっくりと沈んでいく夕陽は、人の中の何か底に潜む熱いものと同調し、体を熱くさせる。

 

「あと少しで、沈むね」

 

何と無しに、隣に居るリボーンを見る。

綱吉は、一瞬別世界に迷い込んだのかと錯覚した。

 

 

誰だこれ。

 

隣にいる『何者か』の横顔は、恐ろしく端整であり、白い肌が夕陽に染まって美しく鮮やかにきらりと光った。

白い肌と対のように潜む黒い瞳は、ひっそりと輝きを放つ黒曜石のようだった。

 

今、傍にいるこの人物は、

人間、か?

 

 

そうだ。

コイツは、ずっと昔からオレの傍にいる、

 

大切な、幼馴染で、

 

オレの愛する人、だ。

 

 

リボーン、お前って。

神様だったの?

 

 

 

 

「ツナ?」

 

ドクン。

 

自分の心臓の音をはっきりと聞いたのは初めてだ、と思った。

 

リボーンが訝しげに綱吉を見ている。

夕陽はとっくに沈んでいた。

 

手のひらが、そっと頬に寄せられる。 白い、陶磁器のような、美しいそれ。

 

ドクン。ドクン。ドクン。

 

ふ、と、ぐるぐるモミアゲの神様が微笑んだ。

 

うわ。 ダメだ。死ぬ。

 

 

触らないで、と思う前に、手を振り払っていた。

触れた頬が、指先が、熱を持っている。

リボーンの目が見開かれるのがわかったけれど、綱吉は顔を逸らした。

その瞳に自分が写されているのかと思うと、全身に電流が走るような、自分が溶けてこの世界から消えてしまうような気がした。

ドク。ドク。ドク。

 

今、絶対、顔赤い。

 

ダメだ、見るな。

 

 

立ち上がる。リボーンは目を開いたまま、綱吉を見上げた。見るなってば。

無理矢理言葉を搾り出した。

 

「先、帰る」

 

返事も待たずに駆け出した。

少しでも離れたかった。 傍にいるだけで、あんなにおかしくなりそうになる、なんて。

オレ、どうしたんだろう。

 

どうしちゃったんだろう、本当に。