視界には顔顔顔。しかもなんだか美形率が多い気がするのは気のせいだろうか。
と思いながら、綱吉は時折びくりと大きく震えながら、面々を見ていた。
一番顔が近い、なんだかタバコのにおいがぷんぷんする(不良なんだろうか)美形は、先ほどから瞳が見えないほどに涙をでろでろ流している。こわい。
綱吉は視線を移した。少し後ろに佇んでいる背の高い爽やかそうな少年は、笑えばさぞ女の子たちが悲鳴をあげるだろう精悍な顔つきをしていた。笑えば。厳しい表情に、綱吉はこちらにも怯えていた。
その横に立っている少年は、モロに外国人だった。金髪碧眼容姿端麗、きつい三白眼も様になるアクセント。いやそんなフォロー入れても怖いもんはこわいんだって。目が合うと、ギリッ、っと音が鳴るくらい睨まれて、綱吉はいっそう涙目になった。
だが、しかし。
綱吉が一番恐ろしいと感じていたのは、壁に背を預けている少年だった。
(・・・・・・・なんつーか、お、オーラ?)
ヤバイ。ものっそい、ヤバイ。というか禍々しい。綱吉一人かんたんに呪い殺せそうなくらいだ。視線は感じないものの、さっきからビシバシと体中に当たっているように思うのは、絶対に気のせいじゃない。人間かアイツは。
(呼び名は「悪魔くん」か「まゆ毛タレ男」だな)
己のネーミングセンスの無さに若干へこみながら、綱吉は瞬いた。額にびっしりと、脂汗を浮かべながら。
何とも言い難い雰囲気を一瞬にしてぶち壊したのは、ドアを開けるに次いで場違いに響いた、綱吉にとっては聞き覚えのあるような声だった。
幼い感のある女性は、自分の顔を見るなり叫んだ。
「ツナっ!あんた、記憶喪失になったって!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・みたい、です」
そんな、泣きそうな顔しないで。もらい泣きしそうッス。
母親と名乗る人物は、神妙に保健医の話を聞いている。階段から足を踏み外したようで、という台詞が聞こえ、綱吉は恥ずかしさのあまりに段々と俯いた。後頭部がずきりと疼く。絶対でっかいたんこぶになってるだろーなーと思いながら、自分の膝頭をぼーっと眺めるのに専念することにした。
だって、自分のドジで勝手に頭打って勝手に記憶を飛ばしてしまった(しかも自分のことしか覚えていない)だなんて、情けなさ過ぎる。それを母親や恐らく友人たちと思われる人たちまで一緒になって、暗い表情で己を取り囲んでいるのだ。恥以外の何者でもない。
一生懸命現実逃避していたら、いきなり頭を叩かれた。
「い゛ッ!?」
「・・・・・・・・・・・・帰るぞ」
顔を上げると、まゆ毛タレ男くんが目の前に立っていた。端整な顔は人形並みに無表情だ。・・・・・・とても、怖い。
「帰るって、いっしょに?・・・・・きょうだい?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
無視かよ。
帰るなりなぜか一緒に部屋に入ってきた少年に、綱吉は青褪めた。なんだか、このひとと一緒に居たくない。
「あの、」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・なんか、その・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・すんません」
なんでもないです。
ていうか、何も悪くないよねオレ。なんで謝ってんだオレ。ていうかなんで睨んでんだアンタ。