綱吉は、帰り道をとぼとぼと歩いていた。背中には影を背負っている。

その右隣では、リボーンが肉まんの包み紙を開けていた。半分に割る。

「ん」

綱吉に差し出す。綱吉は礼を言いながら受け取った。顔は下に向けたままだったが。

 

中学三年の秋、高校受験を控えた生徒たちは、放課後の時間を塾に費やしていた。

綱吉は塾には通っていなかった。夏季体験入塾で、塾の講師全員に匙を投げられたのだ。

リボーンは言わずもがなだ。綱吉は自分の出来の悪さを恨んだ。

 

「ねえ、リボーンって、高校どこ行くの?やっぱ、有名私立とか?」

「なんで俺がわざわざ金かけて私立なんざ行かなきゃなんねえんだ。普通に並盛だぞ」

「え、そうなの!?先生たちがやたらと呼び出してるから、てっきり推薦の話かと・・・」

リボーンはここ数日、職員室に呼び出されっ放しだった。

彼が並盛高校に進学すると聞いた、担任を初めとする職員たちが、引っ切り無しに有名進学校を受験するよう

説得していたのだった。

「ツナだって並盛だろ?」

さり気なく問うリボーンに、綱吉は沈黙で答えた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・てめえ、まさか・・・」

「いや、ちょ、なんでそんな戦闘体制な声なの!?怖い、怖いから!」

「お前が急に黙るからだ」

リボーンは不機嫌に言う。

「オレだって並高行きたいよ!・・・でも・・・・・・・・・・・・・・・・・・偏差値が・・・・」

しょぼん、と綱吉は項垂れた。

 

 

今日、綱吉は、進路指導室に呼び出された。

そこで、担任から『今の学力状態では、並盛高校の受験は厳しい』と宣告されたのだ。

「今日、先生に銀玉高校の受験薦められた」

「銀玉?て、あのチャリ通で四十分かかるところか?一部の生徒と先生が変わりもんで有名なあそこか?」

「うん・・・・・あそこなら試験も通るかもしれないし、推薦も可能性あるかもって」

綱吉は、半分その気になっていた。

やっぱり、可能性があるところに懸けたい。

それに、高校が違ったって、リボーンとはお隣さんだからいつでも会える。

(・・・まあ、高校に仲良い友達が出来ちゃったら、あんまり遊べないかもしれないけど、)

綱吉は溜息をついた。

中学ではリボーンを慕う生徒が多かった。男女問わず。

リボーンは、なぜか特定の友人はつくらなかったが、高校では違うかもしれない。

自分以外に、もしかしたら自分以上に仲の良い友達が出来るかもしれないのだ。

(さびしいなあ・・・)

離れるのが嫌だ。

でも自分は勉強が出来ないのだ。

綱吉は元来諦めるのが早い性質だった。

 

 

 

急に、バシンと頭を叩かれた。

ビックリして隣を見ると、リボーンが綱吉を睨んでいた。

二人の足は、自然と止まっていた。

「――――てめえ、ふざけんなよ」

地の底を這うような低い声で囁かれ、綱吉は思わず身震いした。

この声を出した時のリボーンには、絶対に逆らってはいけない、と経験が物語っている。

「てめえのことだから、どーせ『まあ銀玉でもしょうがないか』くらいに思ってんだろ」

「だって、オレじゃ」

「無理じゃねえ」

テメーは理解が遅いだけだ。時間をかければ、やりゃ出来る。

リボーンの確信に満ちた声に、綱吉はビックリした。

彼が、こんな風に綱吉に言うことはなかったから。

 

「二ヶ月だ」

「え」

「二ヶ月で、お前の偏差値を並高レベルまで上げる」

「!、絶対無理!!!」

「無理じゃねえ、大体お前は無理無理最初っから言いすぎだぞ」

「で、でも、オレの今の偏差値、そーとー低いんだけど・・・」

「そっちの担任から常に情報入ってるから知ってる」

「!(ちょ、何教えてんだよ!)」

「今日から俺が毎日みっちり家庭教師してやる」

「!!!」

「ママンに、しばらく住むように言っとくからな」

「り、りぼーん!」

「明日から自転車通学だぞ。少しでも通学時間を短くする。

二人乗りだ、テメーは漕ぐの遅いからな」

「マジで!二ケツって禁止じゃなかった!?」

 

「絶対に」

「絶対に、並高合格しろ」

 

そんで、一緒の高校に行くぞ。

 

見たことの無いリボーンの真剣な表情に、その時綱吉は声を出すことが出来なかった。

 

 

 

リボーンが歩き出す。

「ほら、行くぞ。そうと決まればダッシュで帰るぞ」

珍しく早足になっている。といっても、コンパスの差が大分あるので、綱吉に合わせたくらいの速さだったが。

綱吉は慌てて後を追った。

 

(・・・・・・・・本当に、受かるんだろうか)

正直、信じられなかった。担任は、並高は絶望的とまで言ったのだ。

(でも、)

綱吉は思った。

 

リボーンは何でも出来る。

リボーンが出来なかったことなんて、今までなかったのだ。

 

リボーンだったら、オレを合格させることだって、出来るかも。

 

 

「ツナ、早く来い!」

リボーンはすでに遠く離れてしまっている。

「ま、待ってえ!」

綱吉は駆け出しながら、にへら、と笑った。

(・・・・『絶対』、だって、)

一緒の高校に行きたいのが、自分だけじゃなかったのが、こんなにも嬉しかった。

 

 

「絶対受かるぞー!!」

「うるせえ」

 

道端でいきなり叫んで両手を揚げた綱吉の頭を、ベシリと叩きながら呟いたリボーンの顔は、ほんの少しだけ緩んでいた。

 

 

 

 

 

※お気づきになった方もおられるかもしれませんが、銀玉高校とは、某ジャ●プの某●魂のパロのパクリ真似っこです。

気にしないでください。