じゃじゃじゃじゃーん!

本日はいよいよ、運命の合格発表―――!!

 

脳内でハイテンションにナレーションを流してみたものの、実際のテンションは最低だった。

 

AM.5:45

 

綱吉は、自宅の玄関の戸を静かに空けた。

階下に明かりは無く、奈々はまだ起きていない。

隣の家の窓を見ると真っ暗で、幼馴染が起きている気配は無い。

(おっしゃあああ―――――!!)

小さくガッツポーズをとり、綱吉は家の敷地を出た。門の扉を開け、鍵を閉めようと―――

 

「早起きだな」

ガシャラン!! 後手に扉を思い切り閉めた綱吉の前には、最強の幼馴染が立っていた。

「お、おはようリボーンさん!いい朝デスネ!!」

「ちゃおッス、ダメツナ。今日はいつもより不景気なツラしてるな」

「あ、あさめし?ちょおっとまだ早すぎるんじゃね?」

「テメーどこ行くんだ」

「お、おれは、ちょっとそこまで」

「逃げる気じゃねえだろうな」

「ま、まさか、そんな」

「はい、一緒に朝ゴハン食べましょうねー」

グァシ!と襟首を引っつかまれ、綱吉はズルズルと引き摺られていった。

「い、い、いやだああああああ・・・・・・・・・・・」

「往生際が悪いぞ」

 

 

AM.9:57

 

二人は並盛高校の前に立っていた。

「うううういやだあああ・・・・どうせ、どうせダメだあああ・・・・」

「ベソベソすんな!鬱陶しい!」

リボーンが綱吉の頭を叩く。

周りには同校や他校の受験者達が、緊張と興奮でざわついていた。

(だって、これで落ちてたら・・・・・・オレ、一生立ち直れないよ・・・)

綱吉はリボーンをちらりと見上げた。

まあ、リボーンは当然合格だろう。そこんとこは二人ともよくわかっている。

今日は、『綱吉の』合格発表を見に来たのが前提なので、リボーンが落ち着き払っているのが信じられなかった。

(コイツ・・・ほんとにオレが受かるって思ってんのかな・・・)

「ああ」

いきなり答えられて綱吉はびっくりした。

昔からリボーンは時々綱吉の心を読む。

「絶対受かってるさ」

リボーンの横顔はひどく静かで美しかった。

それを見て、綱吉は少しだけ気が楽になった。

 

どよめきが起こる。掲示板に、合格者の番号が貼り出されたのだ。

「り、り、り、」

「落ち着け」

(ていうか、なんでコイツこんな落ち着いてんの!?)

「リボーンは、」

「97番だ」

あった。

まあこれは当然なので、二人の反応はなかった。

「ツナのは・・・」

(オレは、125、)

107、110、114、119、123、

 

 

 

「―――――――――、やっっっっったああああああああああ―――!!!!!」

 

思わず、いつかの日のように、両手を掲げてガッツポーズした。

「リボーン!!!」

「ああ、おめでとう」

「リボーンも、おめでとう!」

綱吉は、久しぶりの満面の笑顔で、リボーンに抱きついた。

「ダメツナめ」

言いながらも、リボーンは嬉しそうに綱吉の頭を撫でた。

 

 

AM.10:42

 

「おい。俺にも茶、くれ」

「ほい」

コンビニで買ったペットボトルを飲んでいた綱吉は、そのままリボーンに渡した。

「ちょ、飲みすぎ!」

「ケチケチすんな」

開けたばかりのそれは、すでに三分の一も残ってなかった。

「そんなに喉渇いてたの?」

「んー、あー、まあな」

(もしかして、リボーンも、実は緊張してた、とか?)

一応人の子なんだなあ、と綱吉はのんびり考えた。

高校に合格したという喜びがものすごい安堵をもたらし、ここ数ヶ月の猛勉強の凄惨さを忘れさせていた。

「でも、こうして合格できたのも、全部リボーンのおかげだよ」

「まあ、ツナ一人じゃ無理だったな」

「ぐっ・・・それは言うな・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、ありがとね」

改めて礼を言うのは照れるが、『親しき仲にも礼儀あり』だし、綱吉は心の底からリボーンに感謝していたので、

素直に礼を言った。

「・・・・・・・・・・・」

黙っていたリボーンだったが、ふと、何かを思いついたように、目をキラーンと光らせた。

綱吉はそれを見ていなかったので、知らず逃げるタイミングを失った。

まあ、見ていたところで回避できたかどうかはわからないが。

「なあツナ、礼がほしい」

「え、なに?」

「言葉じゃなくて、何か礼がほしい」

「??」

「俺の言うこと、一つだけ聞いて」

「え、うん、オレに出来ることなら!」

合格の喜びに塗れた綱吉は、安易に頷いた。

リボーンの『頼み事』は、昔から碌なものじゃない、と経験で知っていたのに。

リボーンの目が再びキラーンと光った。

「今度、二週間ほどイタリアに修行しに行こうと思ってんだ」

「ふーん」

「お前も来い」

「ふーん・・・・・・・・・・・・・なに!!??」

その時になって初めて綱吉は顔を青褪めさせた。

 

リボーンの『修行』と称する特訓。

綱吉は過去数度、道連れにされた経験があった。

忘れもしない小五の夏、初めての『修行』に付いていった(正確にはいつの間にか連行されていた)時、イタリア

だったのだ。

リボーンの親戚だという人たちの家で、彼が『修行』する、と言い出したのだ。

出迎えた屈強なスーツ姿のゴツいサングラス男共に笑顔で迎えられ、着いた屋敷ではアロハシャツの人の良さそうな

じーちゃんに笑顔で歓迎された。

出会う人皆気さくですぐに打ち解けたのではあるが、なぜか時々血濡れの服だし、リボーンは毎日涼しい顔で拳銃を

ぶっ放していた。

付き添いで付いていったはずの綱吉は、なぜか崖登りをさせられたり、山で滝に打たれたり、熊と対峙させられたり、

そりゃあ散々な目に合った。

上空一万メートルのヘリの中から落とされた時、とうとう綱吉はリボーンや周りの人に物凄く切れてしまい、それ以来

イタリアを訪れることはなかったのだ。

(綱吉は朦朧としていたので覚えていなかったが、日々の特訓に精神的に疲れた綱吉が、「もうやだ!リボーンなんて、

じーちゃんなんて、大っっ嫌い!」と涙ながらに絶叫し、リボーンとじーさんが相当なショックを受け、即刻帰国した、という

エピソードがあった)

しかし、年に一度の『修行』はリボーンにとって絶対らしく、必ず国内のどこかの山奥に連行された。

その時の様々な出来事を思い出し、綱吉は泣きたくなった。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・じーちゃんのとこ・・・・・?」

「そうだ」

「即答かよ!てか、リボーン一人でたまにイタリア行ってんじゃん!オレなんて必要ないよ!」

「じーさんがな」

「・・・・・・・・・」

「お前に会いたくて会いたくて仕事が手につかないと昨晩電話してきた」

「なんだそれ!」

「合格したら連れてこいってさ」

「ううううううううう」

会いたいと言ってくれるのは嬉しいが、正直トラウマなのだ。

 

(・・・・・・・・でも、まあ、)

 

いっか。

合格出来たし!

 

「・・・・・・お土産何にする?」

「ママン手製の桜餅と『ひよこまんじゅう』で」

じーちゃん元気かなー、と呑気に呟いた。