周りの空気が一気に白くなった。が、綱吉はそれを察知できる余裕なんて全くない。

 

やりたくなかったが、一向にリボーンが動く気配を見せなかった。ので、おずおずと舌を入れた。

間近に在りすぎてよく見えないリボーンの目が、少し細められたような気がした。

ぐちゅ、ちゅ、と、水音が鳴るたびに、綱吉は今すぐ消えてなくなりたい、と思った。

周りの目を一向に介さず、リボーンはそのまま前に倒れた。綱吉を押し倒す形になる。 コロネロ達の腕は、すでに

二人から離れていた。

 

リボーンは容赦なく攻め立てた。思い切り舌を絡ませている。 綱吉の体は、びく、びく、と跳ねていた。

「ふ、」

口蓋をなぞられた時、綱吉の体から力が抜けた。

それを確認したリボーンは、ふ、と笑って(少なくとも綱吉には笑ったように感じた)、下唇を吸い上げながら、ゆっくりと

顔を離した。

綱吉は息苦しさと圧倒的な羞恥心で、顔を真っ赤にさせながら、肩を上下させていた。

口に何かを加えている。

 

「コイツの勝ちだな」

 

綱吉がよろ、と起き上がった。 フラフラしながらリボーンの前に座り、両手を取る。

カチリ、と、手錠が外れる音が鳴った。

 

(あー、もー、だめ)

 

恥ずかしさ、怒り、惨めさ、大量の負の感情が渦巻くと、人って倒れたくなるんだな。

思いながら、綱吉は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

(・・・・・・、ここ、どこだ)

目が覚めると、一瞬どこだかわからなかった。

が、すぐに気付く。リボーンの部屋だった。

(そっか、オレ、意識なくなったんだ)

瞬間、あの時のことを思い出した。

 

(・・・・・・ああああああああああ!)

そういえば、オレ、リボーンと

 

忘れたい。

キスが、あんな、

 

最悪だ・・・!

 

「目が覚めたか」

がばっ、っと起き上がると、リボーンが入り口に立っていた。

開口一番、罵ろうと思った。のに、言葉が出てこない。

顔が熱くなるのが、自分でもわかった。

「熱でもあるのか」

からかうように言うリボーンに、カッとなって思わず叫んだ。

「ば、ばかやろ!」

「お、大丈夫そうだな」

「ていうか、なんで、あ、あんな!」

「なにが」

「舌まで、入れ・・・・・・・・・る必要なかった、じゃん!!」

「間接キスだ」

 

綱吉は止まった。

 

「京子の味は良かっただろ」

 

 

この、ニヤけた面。

生まれて初めて、心からリボーンを殴りたいと思った。

 

「ねえ、三日間だけお前を奴隷に出来るんだよな」

「ああ」

 

「ちょっと、頬貸して」

 

 

 

 

 

「なんだそれ」

開口一番、コロネロは目を丸くしてソコを指差した。

「うるせえ」

リボーンの頬に青あざが出来ていたからだ。

「ツナ、起きたのか?」

「ああ」

不本意そうなリボーンは、それでもとても機嫌がいいように見えた。

「コンテストの時はあんなに機嫌悪かったのにな」

「あー、もう忘れた」

この男は、本当にマイペースだな。コロネロは呆れた。

「それにしても、口の中に隠すことないだろ。変な病気になるぞコラ」

「ツッコミどころ違うぞ」

 

 

「今日は、ツナと京子にとっては最悪な日だったな」

「なんでだ」

「お前のような男にキスされたから」

「京子にはしてないぞ」

「オンナノコなのに・・・・・・・・・・・・え、マジでか?」

「口の端にくっつけただけだ」

「・・・・・・・・・・・ツナにはディープかましといて?」

「アイツはいーんだ」

「・・・・・・・・・・・(可哀想に・・・)」

 

 

「コンテストの優勝商品ってなんだったんだ?」

「『北海道グルメツアー二泊三日の旅・ペアでご招待』」

「・・・・・・・・・・・まさかそれも」

「とりあえずちょうど三日間だからな、今から連れて行く」

「・・・・・・・・・・」

「機嫌直しとかねえとな」

「・・・・・・・・・・お前って・・・」