「お早うございます!」
獄寺の元気のよい声が教室に響いた。
だが、その挨拶が向けられた本人は、枯れた声で「おはよう」と小さく返すのみだった。
「あれ、沢田さん、大丈夫ですか?どこか痛いんですか!?」
「いやほんとにだいじょうぶだからおかまいなく」
ぐったりと体を机に預ける綱吉を見て、獄寺はオロオロと周りを回った。
「よー!」
「おはよ・・・」
「沢田さんはお加減が悪いんだ、大きな声を出すな!」
獄寺君の方が絶対大きいよ。
とは突っ込まず、綱吉は片手を上げて山本に挨拶した。
「・・・、ツナ、だいじょぶか?保健室行く?」
「んー、たぶんだいじょうぶ」
「あれ、首んとこ・・・」
くび、首?首がどうかした?
きょとんとした綱吉は、己の首に目をやった山本、次いで獄寺が、ぴしりと固まった音を聞いた気がした。
そういえば、今朝。
学校に行く前にアイツ、思いっきりディープちゅうをかましてきて、
そんでその後、 確か首に・・・・
・・・・・・・あ。
「「――――――あのヤロオォォォォォォオ!!!!!」」
絶叫した次の瞬間ダッシュで教室を飛び出す二人を、「ま、まってえ!」と慌てて引留めようとして体中に痛みが走り、
椅子から転げ落ちた綱吉は、思い切り床とキスをした。
片や、別のクラスでは、ある男が学園祭以来の注目を集めていた。
ピンクや黄色やオレンジが混ざった、もの凄く目に眩しいオーラを発しながら、後ろの席の男は鼻歌を歌っている。
時々花も飛んで見える。
悪友のコロネロでさえ、思わず引いてしまうほどだった。
頬杖をつきながら、時折ニヤリと笑う姿は、普段カッコいいと騒いでいる女子生徒でさえも目を丸くして固まらせていた。
「おい、リボーンさん」
「なあコロネロ」
本人から声を掛けられるとは予想していなかったので、思わずコロネロはびくりと震えた。
「な、なんだ」
「―――生きている、って、素晴らしいな」
頭でも打ったのか、とは聞けなかった。
コロネロの思考は停止させられていたからだ。
廊下の方から、なにやら絶叫、次いで誰かが走って近付いてくる足音が聞こえてきた。
「来たな」
リボーンはニヤリと笑い、立ち上がる。
今ならコイツ、無敵だぜ。
コロネロは頭の片隅で、見えぬ相手にそう呟いた。