「あ、『リボーン』」
通りすがりの女子高生の言葉を耳にし、綱吉は知らず反応した。
交差点にドドンと聳え立つビルの窓には、一面長身の男のポスターで彩られている。
「この人、超カッコいいよねー」
「写真集買った?」
「買った買ったー」
どこがカッコいいんだ。
ただ足がちょっと長くて、顔がちょっとばかし綺麗で、ちょっとカッコつけてるだけじゃねーか。
「あー、いーな、カノジョになりたーい」
「あははは、ムリムリ!」
「ひどーい」
キャイキャイはしゃぐ女の子タチの声を振り払い、足早にその場を去った。
「ただいまー」
「遅せーぞ」
「・・・・・・・・スイマセン」
ソファに寝そべりながら、メシ、と当然のように要求した男に、綱吉は必死に怒りを抑えた。
(オレはお前のカノジョでもオカアサンでもないんだぞ!)
だが、足は台所へと向かう。悲しい性だ。
「おい、今度の日曜空けとけ」
「えー!何それ!オレバイトなんだけど!てか急すぎだろ!」
「ソファ買いに行くぞ、今のじゃ足が入らねー」
「・・・・・・・・!(小っさくて悪かったな!)」
「行くぞ」
「・・・・・・・・・・ハイ」
結局、こうだ。何て甘いオレ。
リボーンがニヤリと笑った。
ソイツを拾ったのは、本当に偶然だった。
「・・・・・・・・・何してんの?」
「寝てるよーに見えるか」
なぜか公園のベンチの下に潜っていたのだ。
「変態?」
首を傾げながら思わず失礼な発言をしてしまった綱吉に、男は睨みで応えた。
(・・・・・こーゆーのは深く関わらないに限る、って近所のばあちゃんが昔言ってたな)
クルリと踵を返し、綱吉は歩き出した。
てくてく。カツカツ。
てくてく、てく。カツ、カツカツ。
てくてくてくてく!カツカツカツカツ!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あのー」
「何だ」
「なんで付いてくんの・・・・・?」
「気にすんな」
「気になるだろ!」
そして、家まで付いてきた。
そのままノリで居座っている。
「逃げてきたんだ、暫く匿ってくれ」
横柄な態度でそうふんぞり返った男は、日本でもトップクラスのカリスマモデルだった。
綱吉が知ったのは、だいぶ後のことだったけれど。
「てか、この際引っ越すか」
ぶほ、と綱吉は味噌汁を噴出した。
「な、な、な」
「間取りはもうちょい広い方がいいな。でも部屋は共用にするか」
「お前、『しばらく』っつったじゃねーか!」
「だからじゃねーか」
意味わかんねー!てか噛み合わねー!
綱吉が呆然としている傍で、リボーンはどこに住まいを置くか真剣に考えていた。