コロネロの知り合いだと言うから、綱吉はてっきり刑事か何かだと思っていたのだ。

また何かの殺人事件のような類だと思い込んでいた。

まさか、テロリストに捕らえられた日本人の救出作業とは!

夢にだって出て来ない。

 

件の謎の人物は、一体何者だろうか。 綱吉は考えたが全然解らなかった。

(こういう時に勘が働けばいいのに)

余計な事は勘が働くくせに、自分の思考に関してのことはさっぱりだ。

なぜか自分は西アジアのある国の、ホテルと言うには貧相すぎる建物のベッドに腰掛けている。

部屋には一応の風呂やトイレ等の設備は有り、何とか使える状態だった。

風呂のドアが開き、男 ― リボーンが出て来た。

その姿を見て、綱吉は思考を停止した。

 

「・・・・・、どうした、何かあったのか」

「・・・・・・・」

「何で白目剥いてんだ」

「・・・・・・・はっ!じゃ、じゃ、じゃなくて!前、前!」

生まれたままのオープンスタイル、いわゆる全裸で堂々と出て来たリボーンに、綱吉は全力で突っ込んだ。

「タタタタオルで隠して!お願いだから!」

「『風呂上りは全裸』、これが俺のポリシーだぞ」

この人間には羞恥心と言うものがないのか! 綱吉は頭を抱えそうになった。

「テメエ、人に突っ込み入れる前に、自分はどうなんだ」

「え、何が?」

「コロネロはああ言っていたが、俺はまだお前のことを信用しちゃいねえ」

綱吉は黙った。

 

事実、日本を出てからこの国に入るまで、リボーンに事件の概要を説明され、犯人の潜伏先と人質の居場所を聞かれた

ものの、綱吉は何も閃きはしなかった。

リボーンは少し後悔していた。

綱吉の能力を実際にこの目で見たわけでも無いし、このまま何の役にも立たなかったらこの国に連れて来た意味も

無い。

早まっただろうか、と舌打した。

「まあ、別にいつも勘が働くとは限らないし」

リボーンには少し悪いと思いながらも、綱吉は事実を述べた。極力彼から目を逸らしつつ、だ。

コロネロの時だって、偶然が重なってなんとか解決出来たようなものだ、と綱吉は思っている。

アイツは少々過大評価し過ぎだ。

このまま日本に送り返された方が、お互いの身のためにも―――

 

 

綱吉は思考を中断した。

 

 

傍でミネラルウォーターを飲んでいたリボーンに言う。

「逃げよう」

「あ?いきなりどうした」

「何か嫌な予感がする」

「テメエ、俺が信用してないからってデタラメ言って誤魔化そうなんて」

リボーンの言葉も聞かず、綱吉はさっさと荷物を纏め始める。

「しまった、風呂入っとけば良かったな。でもそんな時間も無いな」

「おい、聞いてんのか」

「うわ、なんだこれ!」

綱吉は額を押さえた。嫌な予感は段々と確信に代わって行く。

背筋がぞくぞくと冷え、こめかみに汗が流れた。

リボーンの方を振り向いた。不審な、僅かに驚いた顔をしている彼と視線を交わす。

「行こう。まだ死にたく――」

 

同時に窓の外を見た。

 

何か丸いものが飛んでくる。

何あれ。何あのでかいミサイル状の塊。

 

 

(マンガかよ)

 

 

ズガドオオォォォォォン!!

 

 

建物は音を立て、一瞬にして崩壊した。

 

 

 

 

 

「跡形も無いな」

「ひええええええ!」

「新しい宿も探し直しだな、面倒くせえ」

「ぎああああああ!」

「おいうるせーぞ、耳元であんま騒ぐな」

「たたたた助けてえええ!」

「助かったじゃねーか」

間一髪、二人は脱出に成功していた。 なぜか、空を飛んで。

「ななななな」

「俺用に開発された、脱出用の携帯ジェットだ」

(お前何者だよホントに!)

 

リボーンは背中に機械のようなものを背負っている。

それは、SF映画のようにヴオオオオ!と炎を吹いていた。

リボーンに抱えられながら、綱吉は大変にパニックになっていた。

空を飛んだのは予想外だったが、多少落ち着いてきた。ような気がする。

それに、抱きかかえられるのは別にいい。

だが、それが全裸の男というのはどうなのだろうか。

正直とても嫌だ。変なところに当たらないように意識する自分に疲れる。

全裸で背中にジェットを抱え、空を飛ぶ男。それに抱えられる男。シュール過ぎる光景だ。

 

何にせよ、命は助かった。綱吉は脱力した。

「とりあえず、ホテルを探すのが先だな」

「やめといた方がいいかも」

「なんで」

「ここら辺一帯、多分囲まれてる。先に南の下辺りに向かった方がいい。

ここから大体50km先くらいかな。川の下流のとこに、小さな村があるみたいだ。

そこなら多分大丈夫かも」

「・・・・・・・・マジもんだったんだな」

「何が?」

「別に」

「ところで、オレもう日本に帰りたいんだけど」

「何言ってやがんだ、まだ仕事は終わってねえぞ」

「別にオレいらないじゃん!もう帰る!」

先ほどの態度の割には『仕事』だと言い引き留めるリボーンに、綱吉は「少しは信用してくれたのかな」とチラリと思い

ながらも、やはり帰りたい、と切実に願っていた。

ていうか、早く服を着てほしい。