ねえムーミン。眠いぞムーミン!

 

綱吉は窓越しに白み始めた空を眺めた。

手元には大量の書類。ボンゴレ内における総決算監査書類、そして次年度における総予算見積書。

午前中の会議に使う大切な資料だ。

 

「・・・・・ハンコ」

朦朧としながら、白い紙が散乱したデスクの上に手を這わす。

震える手で朱肉に押し付け、力強く押さえ込んだ。

 

「終 わ っ た ・・・!ムーミン!」

 

後は会議で通れば、終了だ。

手にした紙束を放り投げ、力なくバンザイをして、綱吉は立ち上がった。

会議までは後四時間ほどある。

寝よ。

 

重い体を頑張って引き摺り、寝室に入りベッドまでたどり着いた。

柔らかな羽毛の感触、ベッドメイキングをしてくれている獄寺に感謝しながら、至福の一時を味わうべく布団を捲った。

 

 

「お疲れ様です!」

「・・・・・・・・意味わかんない」

「温めておきました!さ、どーぞ」

「なんでいんの」

「気持ちよく寝ていただくための、最高の環境だと思いまして」

ベッドの中、腕を広げながら極上スマイルで横たわっている右腕は、ほら、早く!とでも言いたげな視線を送ってきた。

ハートつき。うざい。

「オレ、本気で寝たいんだけど」

「はい、承知しております」

「寝かせろよ頼むから・・・」

「最高の安らぎをお約束します!」

腕枕して差し上げるってか。胸に顔を埋めろってか。

オレの中に潜むマグマ溜まりがいい感じに噴火寸前、富士山もびっくり。

いくら十年来の付き合いでも、この仕打ちはどーかと思うよ獄寺君。このタコ頭。タコ。墨。墨男め。

 

布団を捲る前に感じていた感謝の気持ちは、とうの昔に吹き飛んでいた。

 

 

 

これで、よし。

少しだけすっきりした顔で、シャツを脱いだ。

白い羽が舞い散るのが少し肌にくすぐったいが、今は眠気が完全勝利している。

いそいそとベッドに潜り込む。マットレスの中央に出来た穴から、煙が少し立ち昇っているが気にしない。

修理費は、獄寺に自腹で払ってもらおうとぼんやり考えた。

 

白目を剥いて流血し、意識を飛ばしている右腕を押しのけ、羽が飛び出ている枕も押しのけ、全身の筋肉が緩むのを

感じながら布団を被った。

 

 

おやすみなさい、ムーミン。