夕暮れ時、土手を二人で並んで歩くのは珍しい、と綱吉は思った。

沈みかかっている夕陽が紅く燃え、とても美しい。

ここのところの曇り空が嘘のように、澄み渡った空だった。

 

「ツナ」

リボーンがそっと呼ぶ。

幾分、気遣うような色が見えたのなら、綱吉は少し嫌な気持ちになったかもしれなかった。

けれど、リボーンはいつものように少し素っ気無さを含んだ独特の声色で綱吉を呼んだ。

それで、綱吉は少しだけ気が楽になった。

 

 

今日の三者面談で、進路についての話をされた。

リボーンが三者面談の席にいるのは当たり前のことなのだが、綱吉は何だか変な気持ちだった。

担任から綱吉の成績の話を聞いている時の真剣な横顔を見て感じたことは、八割恐怖心、残り二割は。

笑い出しそうになる妙な浮き足立った気持ち、だった。

内容は、高校進学についての話が主だったが、将来何になりたいのか、夢はないのかと担任に聞かれた時、綱吉は何も

答えなかった。

特に何もなかったからだ。

担任は「今からでも早すぎることはないから考えておけ」とか、「高校入るまでにしっかり勉強したら大学進学も出来るかも

しれない」など言っていた、ような気がする。

だが、「将来の夢」が何か、と聞かれて、瞬時に脳裏に浮かんだのは、父の姿だった。

 

 

 

「何、リボーン」

綱吉は自分で自分の声が思った以上に元気がないのに、少しだけ驚いた。

「お前、将来のこと考えたことあるか」

「いや、正直、ない」

「そうか」

両親がいて、あまり仲が良くなかった時は、自棄になりながらも「オレ将来どうなっちゃうんだろう」と、悲観的な方向から

考えていたものだった。

だが、今は、あまり何も考えていない。 それが良いのか悪いのか、綱吉にはわからなかった。

 

父さんは、世界中の交通整理をしている、とか言って訳のわからない仕事をしていた。

でも、その背中は、どこか男を感じさせるものだった、ような。

 

 

「焦るな、どんな職業にも就けるように、俺がねっちょり特訓してやるぞ」

「ねっちょりヤダー!!」

「日本で仕事するとも限らないしな」

「ん、なんか言った?」

「いや何も」

「まあ、いざとなったらリボーンのとこに永久就職しようかなー」

「!!!!!」

「退職金はそれなりに欲しいしなあ、老後は縁側でお茶啜る生活がいいなあ」

「・・・・・・・」

「あ、てか、リボーンが何してるかオレまだ知らないし・・・・でも何となく怖そうだよなあ、やっぱやめとこっかなあ、

ねえリボ・・・・・・あれ、何でそんな後ろいんの、おーいリボーン」

 

 

 

 

「終身雇用」と言いたかった綱吉