色々おかしいのでフィーリングで読んでいただけると助かります
唐突にリボーンが言った。
「さ、特訓開始だ」
現在、土曜の午後二時過ぎ、自宅の二階の自室。
隣には獄寺隼人。
山本武はたぶん今頃、学校のグラウンドで汗を流している。
「え、いきなりどーしたの。ていうか、夕べ『今日は久々に羽を伸ばす』って言ってなかったっけ?」
「『俺』はな」
赤ん坊はニヒルに笑う。めっちゃ嫌な予感がした。
「ツナ。お前、こないだの数学小テスト、何点だった?」
「・・・・・・・・・・・・!!ど、どこからその情報を・・・・!」
「聞くのは野暮ってもんだ」
「リ、リボーンさん!十代目は、テストに向けて放課後必死に頑張っておられました!だから、平均の六分の一の点数くらい、見逃してください・・・!」
「今、さり気なく見下さなかった・・・?」
「め、滅相もない!!!」
ぎゃーぎゃーと騒ぐ未来のボスとその右腕を黙らせるため、家庭教師は一番有効な方法を取った。
ズガンッッ!!
「「・・・・・・・・・・・・」」
「よし、黙ったな」
((こ、怖ええー!!!))
「まあ、今日の特訓は(多分)比較的楽だ、ここで出来る」
「え、そうなの?」
「獄寺に教えてもらえ」
「え、俺っすか?」
「内容は」
「『抜け』ることだ」
「・・・?なにそれ?」
綱吉はきょとん、としている。
その隣の獄寺は、一瞬ポカンとした後に、一気に顔を赤くさせた。
何やら鼻を押さえ始め、だんだん前かがみになっていく。
「獄寺、お前が想像しているもんじゃねえよ」
リボーンが突っ込む。
「・・・・・・・・あ、そうなんすか・・・・・」
その途端、獄寺は安堵したような、少しだけ寂しそうな、複雑な表情をした。
綱吉は置いてけぼりを食った顔をしている。
「例えば。敵だらけの所で、味方が周りに居ない状態を想定する。
その時、拘束されたとする。縄や手錠がオーソドックスだが、敵自身に押さえられることだってある。
その時、どうやって抜け出す?そのための『抜け』の特訓だ」
「さっすがリボーンさん!常に様々な状況を考えて御指導なさっているんですね!」
「そうだぞ。決して思いつきや気まぐれじゃないぞ」
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ほんとかなあ)
ドヒュン!
「ひい!すいません!心読むな!」
「というわけで、獄寺、お前の出番だ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
「ツナを抱きしめろ。いや間違った、ツナを拘束しろ」
「ちょちょちょちょちょちょちょぉっと待ったリボーン!!それってどうなの!?」
「何がだ」
「だって、なんかおかしくない?だ、抱きしめるとか・・・第一、獄寺くんだって嫌だろ!?」
「十代目」
獄寺は綱吉の両肩をがっしと掴んだ。
「どうしたの」
「俺は十代目の未来の右腕です。これからも、様々な困難が二人を待ち受けているでしょう」
「・・・・・・・・・・」
「ですから!時間がある今、この時に!二人の絆をより強固にしていく必要があるのです! 日本でも『裸の付き合い』って言葉があるように、
肌と肌をより触れ合わせることによって、二人の間には強固な気持ちが築かれていくのです!!!」
「あのー、なんでそんな微妙な言い回しなの?」
「気のせいです」
獄寺はキッパリと言い切った。瞳がギラギラしている。
紆余曲折後、結局特訓開始となる。
リボーンが部屋を出る際、獄寺に向かって言った。
「獄寺、ちょっといいか」
「ハイなんでしょう!!!」超浮かれている。
「お前、手を抜くんじゃないぞ」
「これは『特訓』だぞ。生きるか死ぬかの場面で、お互いに遠慮しあう馬鹿はどこにもいねえ」
「お互いに死ぬ気で挑め。ツナは必死になって逃げろ。目的は『逃げ出す』ことだ。獄寺は絶対に力を緩めるな。目的は『捕らえる』ことだ。
時間制限を決める。30分だ」
じゃ、がんばれ。
そう言い残し、赤ん坊は去った。
残された二人は、最強の家庭教師の威圧感に中てられ、しばらく動くことが出来なかった。
沈黙を破ったのは獄寺だった。
「十代目、よろしいですか」
「はっ、ごめん獄寺くん」
獄寺の瞳は、先ほどとは打って変わって落ち着いた色になっていた。
「・・・・・・・じゃ、よろしくお願いします」
少しだけ緊張しながらそう言うと、獄寺が構えた。
綱吉は呆然とした。
獄寺がいきなり飛び掛ってきたからだ。
確かにリボーンは手加減なしと言ったが、まだ心構えが出来ていなかったと思った。
「十代目、どうされました。抵抗はしないのですか」
耳元で獄寺の声が聞こえる。綱吉は思わず震えた。
いわゆる『押し倒された』状態になっている。床の上は背中が痛い。
獄寺の顔が首筋に埋められ、何となく、早く逃げ出したい衝動に駆られる。
(―――とりあえず、隙間を作って力を入れて、反動で離れてくれれば)
腕の中で身を捩ってみる。ぴくりとも動かない。
何とか両腕を獄寺の胸、肩の位置に移動させる。 結構力を込めて押した。
つもりだったが、ゆさ、と揺れただけだった。
「十代目、本気出してください」
獄寺の声色は静かだが、ほんの少しだけ愉悦が含まれているように感じ、綱吉はカチンときた。
思いっきり力を込めて押す。だが逆に、獄寺の腕の力はどんどん強くなっていく気がする。
ちょっとこれ、力入れすぎだろ! 体が悲鳴を上げている。
「う、」と思わず声が出た。
獄寺が、息を呑む音が聞こえた。少しだけ拘束が緩まる。
(やった!)
綱吉はその隙を突いて逃げ出そうとした。
だが、それよりも一瞬早く、獄寺の力がまた強まる。
「―――くそ!」
「もう油断しません」
お互い改めて挑みかかる。
チリ、と緊張感が増した。
(もし脇腹くすぐったら、緩まるかな?それとも、余計強く拘束されるか?)
綱吉は考える。今、両腕は、自分と獄寺の胸の間にあり、動かない。
(くすぐるのはいい手段かもしれないけど、自分が締められたら動けなくなる)
だとすれば、使えるのは・・・足、は獄寺君の足で押さえられている。
試しにバタつかせようとしたが、無駄だった。足さえ獄寺の力には敵わないみたいだ。
何か手があるはずだ、何か・・・・・・・
綱吉は視界の端にある、獄寺の耳を見詰めた。
・・・・・・・・・・あ!
「獄寺くん」
耳元で囁く。獄寺はびくっと反応した後、力を込めた。
(うーん、警戒されてるなあ・・・)
人にされて嫌なことを、自分が人にするのは何となく気が引ける。
だが、そうも言ってられない。早く抜け出したい。
なんか、熱い。
綱吉は思い切って、実行した。
「――――――!!!じゅ、」
「おっしゃ!!どけ!!!」
獄寺が思わず腕を離した。綱吉は上半身を起こした。
だがしかし、すぐに肩を掴まれ、再び床に押し付けられる。
「・・・くっそー、今のはいい線いってたと思ったんだけどなー」
「・・・・・・・・・・じゅうだいめ、耳を噛むのは反則です」
「手段は選ぶな、だろ?」
お互いに目を合わせながら、見詰め合う。
獄寺は静かな表情をしているが、先ほどと少し雰囲気が変わったように感じた。
綱吉はそれに戸惑いを覚えたが、次の手を考えることに集中する。
「逃がさないためには、こちらから攻めることも必要ですね。うっかりしてました」
「へ?」
獄寺は、普段見せない静かな笑みを湛えたかと思うと、また覆いかぶさってきた。
しかも、顔が近い。いや、近いって!ちょ、助けて!綱吉は心で叫んだ。
しゃべるには、あまりにも近すぎる獄寺を意識して、声が出なかった。
ちょっとでも動いたら、顔がくっつくような気がした。
「十代目」
獄寺が静かに己を呼ぶ。だが綱吉はどうすることも出来ない。
近すぎて、焦点がぼやける。獄寺の瞳がよく見えない。怖くて目を閉じた。
自分が今どんな顔をしているのか、綱吉は知る術がなかったし、そんなことを考える余裕もなかった。
ふと顔が離れた。
思わず息を吐き、そして、自分が息を止めていたことに気付いた。
だが次の瞬間、耳にぬるっとした生温かいものが触れ、綱吉は「ぎゃっ」と悲鳴を上げた。
「お返しです」
獄寺の声が耳元から吹き込まれ、脳天に響く。
その声の響きに、吐息の感触に、一気に力が抜けた。
だが、獄寺は追撃の手を緩めない。 止めることなく、耳を攻め始めた。
舐め、しゃぶり、噛まれ、息を吹きかけ、舌を入れる。
綱吉はその度、びく、びくっ、と、決して意図的にではなく体を跳ねさせた。
真っ赤に染まった耳は、獄寺の唾液が絡み、てらてらと光っている。
びちゃ、びちゃ、と水っぽい音と、獄寺の息づかい、そして、認めたくはないが、自分の口から漏れる声――――――
「は、あ」、「っ、う、ああ」、等、明らかに敗北を表している。
おまけにとっても恥ずかしい。体が、燃えるように熱くなってゆく。
自分の耳に感覚が集中しすぎて、頭と獄寺の口に含まれている耳が別のものに思えてくる。
さらに、脇腹に獄寺が手を伸ばしてきた。服の中に手を突っ込まれ、手のひらで撫でられる。
「ッ、!!」
綱吉の目尻に、涙が溜まっていた。
その紅く染まった目元を、獄寺は舌を這わせ、涙を舐め取る。
首筋に顔を埋められ、鈍い痛みを感じたとき、自分の体の中の熱と、この状況に対して、本気で有り得ないと思った。
「ご、ごくでらくん」
もうやめてほしい、と思うのに、口が動かない。だんだんと思考がぼやけてくる。
獄寺は再び顔を正面に移動させてきた。
綱吉の意識は朦朧としていた。息が荒い。
(ちょっと、もう、だいぶ、げんかい・・・・・・・)
どんどん顔が近づき、獄寺の顔がほとんど見えなくなった。
お互いの吐息が、唇にかかる。
唇に全神経が集中したかのようだ。ビリ、と感じた。
「・・・・・・・・・・さわだ、さ・・・・・・・」
「30分経過」
二人は瞬時に離れた。というより、獄寺が瞬時に離れた。綱吉は動けない。腰が抜けてるのだ。
リボーンは溜息をついた。
「・・・・・・・・まあ、可能性はあるとは思っていたけどな」
最悪のパターンだな。
獄寺は呆然とリボーンを見詰めていたが、次の瞬間物凄い勢いで綱吉の方に体を向け、頭を床にゴメスッ!!と打ち付けた。
(・・・・あ、ゆか、あたまうった、)
「す、」
「・・・・・・・・・、す?」
「すいませんでしたああああああああああああ!!!!!!!!!!」
綱吉はまだ立てない。しかも息も整っていない。
このまま気を失って全て忘れることが出来たら、どんなに楽だろうと思った。
トラウマ確定だな。