綱吉は悩んでいた。

 

先日の一件で、獄寺を一週間避けまくり、憔悴した獄寺が自宅で倒れ、運良く大家に発見され、救急車で運ばれたことではない。

二日ほど入院する予定らしいが、ちゃんとお見舞いにも行ったし、そこで仲直りした。

 

なぜだ。

わからないことがある。

 

あの時、めちゃくちゃ驚いたし、逃げようと必死だったのは覚えてる。

でも、オレは・・・・・・嫌だとは思ったのだろうか?

そこらへんがわからないのだ。

あんなことされて嬉しかったとかは微塵も思わないのだが、「獄寺くんだし、まあいっかー」で終わらせようとした自分に、おい、ちょっと待てよ、と

ストップをかけてみた。

それでいいのか、沢田綱吉?相手は男だぞ?

 

山本に相談してみた。

獄寺の入院中の今しか、チャンスはない。

実はまだ、先日の件は話していなかった。(恥ずかしすぎて言えなかった)

ツナの話を聞きながら、飲んでいた牛乳パックを握りつぶし(大分残っていた)、山本は言った。

「うーん、ツナは優しいからなー、だからそういうのも許容しちゃうんじゃね?」

「そ、そうかなー」

綱吉は山本の手元を見て顔を引き攣らせた。

山本、顔が怖いよ。何か影が出来てるよ!

 

「あ、じゃあさ、俺とも試してみる?」

「・・・・・・・・・・・え」

「そういうのが嫌かどうか」

 

次の瞬間、目の前になにか黒いものが見えた。

(や、やまもとの、目)

 

 

「やまもとおおおおおおおおお!!!!!」

「へへ、悪い悪い。ツナの唇って柔らかいのなー」

「!!!!!!!!」

綱吉は涙目だ。顔がものすごく燃えている。

ここが屋上だったのが救いだ。

山本の笑い顔がこんなに憎らしく思えたのは初めてだ、と綱吉は思った。

 

「で、どうだった?」

「・・・・・・・・・・・・わからん」

「あ、じゃあもっかい」

「しない!!!」

 

 

「ていうか、ファーストキスだったんだけど・・・・・」

ぽつりと漏らすと、山本は牛乳パック(まだ持っていた)をぽとりと落とした。

「・・・・・・・・・・・・・・まじで?」

「マジで」

「獄寺にされたんじゃねえの?」

「キスはギリギリしてないよ!」

「うわ、やべー・・・・・・・・・やった・・・・・・・」

「何か言った!?」

「いや何も」

浮かれた山本をほっといて、綱吉は思考の海に沈んだ。

(・・・・・・・・・・・・今のも嫌じゃなかった・・・・・・・・・)

 

 

 

(・・・・・・・・・・・!まさか!!)

「オレって変態!!?」

思わず叫んでしまった。しかも授業中に。

クラスメイトと教師は一瞬の空白の後に大爆笑した。

その後、さらに綱吉の『変態』のレッテルが確立されることとなる。

(ちなみにその時の山本は、「ツナかわいいなー顔赤くして」「あーそれにしても唇やわらかかったなー」とニコニコ考えていた)

 

 

 

(あーほんと今日は最悪だ)

夕食の席でも、綱吉はずっと考えていた。

(京子ちゃん、笑ってたなあ・・・・・・・・・・ショック・・・・・・・可愛かったけど・・・・・・・・)

それもこれも、全部獄寺君と山本のせいだ!

綱吉は、ギリリと口の中で思いっきり箸を噛んで、奈々に注意された。

こんなにずっと、一生懸命考え事をするなんて、試験問題を解く時でも無い。

(もー考えるのめんどくさくなってきた・・・・・・)

 

「ツナ」

「なに?」

「お前、バイなのか?」

 

食卓が一瞬にして静まり返った。

(また心読んだな!!!)

子供たちの食事が終わってて、リボーンとビアンキしかいないのが救いだ、と思いながら綱吉は猛反発した。

「り、りぼおんんんんん!!??」

「ツナ、愛の前では自分を隠す必要などないわ」

「ち、違う違う違う!そんなんじゃないから、オレはしがない平凡な中学生だから!」

「ツナ、人はな、有りのままで生き抜くと輝いて見えるぞ」

「変な慰めいらねえええー!!!」

 

ウンウン唸っている綱吉を尻目に、リボーンとビアンキは溜息をついた。

 

「・・・・ていうか、単に物の見方じゃない?男女で意識するよりも、個人として受け入れて接してるのよ」

「男とか女とか、気にしなさ過ぎだからだぞ。京子は別として」

「あと貞操観念が薄くて鈍いのね」

「普段は物事をあまり深く考えない傾向にあるしな」

 

客観的意見、しかも真理に近いことを側で言われているのに、綱吉は全く気付く事無く頭を抱えていた。