「何で、そうなったの?」

「へ?」

目の前の人は、固い表情だった。オレはどう答えていいのかわからず、しばらく黙っていた。

痺れを切らしたのか、彼は近寄って来た。

思わず後ろに下がる。なぜか、近づけないと思った。

彼の表情がより引き攣る。一気に間合いを詰めてきた。

「ひい!」

「ひい、じゃないよ」

「すいません!」

きっと生きていた頃なら恐怖で涙を流していただろう。

そう思った後、ちょっと落ち込んだ。もう涙は流せない。

「・・・・・・・・オレにも、わかりません。てか、覚えてません」

「ふうん、まあどうでもいいよ」

(じゃあ聞くなよ!)

突っ込みたいけど怖くて無理だ。

「貴方は、オレを知ってるんですか」

「・・・・・・・・・・・・・・記憶、ないの」

「はあ」

「頼りないね」

「すいません」

謝りながら俯いた。

コンクリートの固い地面を見詰めながら、オレは何か思い出せるような気がした。

オレはなぜここに来たのだろう。偶然だろうか。

前にいる人の顔が、ぼんやりと脳裏に浮かび上がった。

 

『綱吉』 

 

耳の奥で、誰かの声が聞こえたような気がした。

 

 

「きみ、もうすぐ消えるの」

ぽつりと彼が呟く。オレは、何も答えられなかった。何もわからない。

「じゃあ、最後に君と話をするのは、僕、か」

最後。これが、最後なのだろうか。

胸が軋んだ。

 

「良かった」

「―――、え」

 

今、なんて言った?

 

驚いて顔を上げる。

彼は、オレを見詰めていた。

ひどく優しい顔だった。

驚いて、息を呑んだ。

初めて会ったのに、「こんな顔、初めて見た」と思った。

 

 

「弱くて怯えるだけの草食動物だと思っていたけど、君のこと、嫌いじゃなかったよ」

 

魂が、震えた気がした。

 

オレは、あなたのこと、『嫌いじゃない』、じゃない。

 

好きだったんです。

 

 

気が付くと、彼は去ろうとしていた。

オレは焦りを感じた。 引き止めなきゃ。でも、なんて。

 

 

「雲雀さん!」

 

 

 

彼―――雲雀さんが、驚いた顔でこっちを見ている。

 

オレは、嬉しくて微笑んだ。

 

最後に、雲雀さんの顔、もう一回見れた―――――

 

 

 

「綱吉!」

 

 

 

その声が、オレの世界の最後だった。