庭に咲く花に

ふと足を止めると対照的な色が並んでいた

ソレを見ると自分とアイツを重ね合わせて

ふと笑いが出たんだ





―Una margheritina―






ボンゴレ本部は、広い塀壁に囲まれ大きな庭があり、その中に大きな建物がある。
庭は花々や木々が美しく、屋敷の外形も美しく、お金持ちが住んでいるような豪華な屋敷に見える。
そんな美しい屋敷がマフィアの本部だなんて、一般人からしたら想像がつかないだろう。
その大きな屋敷の中でも比較的小さなベランダがある部屋がボンゴレ10代目の執務室であるのだ。
本来は、広いベランダに広い部屋が決まりなのだが、どうもこの10代目はソレが落着かないらしく、この小さな部屋になった。
といっても移動したこの場所も彼からしたら大きい部屋らしい。
そんな彼も、このなれない部屋に過ごしているうちにいつの間にやら年月は過ぎていき、今ではなれてしまっていた。

いつものように部屋で仕事をする10代目。机にある書類の量は半端な数じゃない。
一日では終わりきらないのが見えている。
ため息をつきつつも、一枚一枚丁寧に確認していた。
そんな中、書類の束をさらに増やしに持ってきた右腕を見て、嫌気をさしたのかついには立ち上がった。

「ああああ!もう嫌だ!なんだよ!今日多くない!?隼人はオレをどうしたいわけ!?」
少し切れ気味、いや大分切れ気味の10代目にビクっとなる右腕の彼。
すでにたくさんの書類があり置ききれずに、机の横に束を置いた。
「10代目、すみません!これも仕事です!頑張ってください!」
右腕こと獄寺隼人は少し苦笑いで10代目こと沢田綱吉に言った。
ムスっとしながら綱吉は机の前に並べてあるソファーに移動してドカっと腰掛けた。
この行動をとると1時間は仕事を再開しないことを知っている獄寺は少しため息をつきながらどうしたものかと頭をフル回転させた。
「・・・あ!そういえば今日雲雀の奴が来ますよ!仕事終わってないと雲雀のやつ怒るんじゃないっすか?」
その言葉にツナは目を見開いてつい先日の電話を思い出してしまった。

そうだ。
今日は雲雀さんが来るんだ!!!
あの人この前電話で、僕が来る時に目の前に大量の書類が終わってなかったら咬み殺す。とか言ってた!
ていうかなんでオレの仕事終わってなかっただけで咬み殺されるわけ!?
コワ!やっぱあの人恐いよ!!

綱吉は青ざめながら重い腰を起こして再び自分の机に戻った。

ああ。どうしてこんなに仕事あるんだ・・・。

そんな虚しい気持ちを抱きながらも、せっせと仕事に取り掛かった。
その様子を見て獄寺は少しホッとしつつも、もう一つ恐ろしい事実を思い出していた。






そういやぁ・・。
今日、骸も雲雀が帰ってくる頃に此処に来るって言ってたな・・・。





そうして夜。

なんとか雲雀が来ないうちに仕事を終えることが出来た綱吉はぐったりとソファーに倒れこんでいた。
獄寺は夜の仕事に出かけてしまって今は綱吉一人だった。


「そんなにぐったりして、どうしたんですか?」


聞き覚えのある声に綱吉はビクッとして身体を起こそうとした・・が・・。
すぐさま肩を押されて倒されてしまう。

「む・・骸!!」

目の前にはいつの間にか部屋に入ってきた骸が居た。

というか・・顔ちかい・・。

「クフフ。相変わらず可愛いですねーvv綱吉君はv」
そういいながら頬を触ってくるものだから綱吉はゾクゾクしながら動けずに居た。
その時、骸の頬に金属なものが触れる。
「ねぇ?僕の綱吉に何してんの?」
横をふと見ると、トンファーを骸に向けて、凄い睨んでいる雲雀が立っていた。
綱吉はさらに青ざめながら、これ、オレ死ぬかな?とか心の中で思っていた。
「クフフ、相変わらずですね。あなたも。」
「君もね。気持悪いパイナポー。」
目の前の嵐というかなんというか修羅場にもう綱吉はどうしたものかと青ざめるしかなかった。
いつの間にやら戦闘体制な変人二人に綱吉は慌てて止めに入る。
「ちょ!こんなとこで暴れないでくださいってば!!」
さすがに自分の部屋で暴れられると後始末がメンドクサイ。
慌てる綱吉を無視して二人はさらに殺気立ててお互い攻撃に入ろうとした。
その時だった。
その動作は一つの声で止められた。


「ちゃおっス。」


いつの間にやら部屋に入っていた一人の少年。
黒色で身を包み、不機嫌そうにこちらを見ている。
「お久しぶりですね。アルコバレーノ。」
最初に少年に挨拶をしたのは骸だった。
少年はフッと笑って静かに歩き始める。
そうして綱吉の前に立つと一言告げた。
「明日、分かってんだろうな?」
その言葉に綱吉はドキっとして、うん。と答えた。
その二人の会話を見る骸と雲雀はため息をついて武器をしまっていた。
「赤ん坊とどこか行くのかい?」
雲雀の問いに綱吉が答えようとしたが先に少年が答えた。
「お前達には秘密だぞ。」
口端をあげてニヤっとする少年の顔ときたら、それはそれは嫌味な顔であった。
「はぁ。君に構ってるだけで疲れるよ。綱吉。また今度僕が帰ったときにでも話をしようね。」
そういって群れるのが嫌いな雲雀はそそくさと帰っていった。
少年がきたことによって骸と雲雀の争いをなんとか避けれた綱吉は安堵しながら目の前の少年に微笑みかけた。
「ところでなんでおめーも来てんだ?随分と早い帰還じゃねーか。」
少年が不思議そうに骸に話しかける。
骸はクフフと奇妙に笑った後、綱吉の手をとって軽くキスをした。
その行為にピクッと眉を動かす少年だったが黙って様子を見ることにした。
「な!!」
綱吉は真っ赤になりながらも骸を見ている。
間近で骸を見る綱吉でもさすがに緊張はするのだ。なんせ骸は美形である。
「早く綱吉君に会いたくてすぐに終わらせて帰ってきたのですよ。雑魚は犬と千種に任せてます。といっても少し心配なのでそろそろ連絡をしてみますけどね。」
その言葉に綱吉はクスっと笑った。
骸は綱吉の部下になってからというもの、異常なまでに綱吉に好意を抱き、また異常なまでに仲間の心配をするようになったのだ。
昔からしたら考えもつかない行動だ。
綱吉はそんな骸が嫌いではなかった。確かに昔は恐いとは感じたが、いまは信頼しているのだ。
数分間、くだらない雑談をした後、骸は再び綱吉にキスをして部屋を出て行った。



二人きりになった少年と綱吉はエスプレッソを飲みながら話をしていた。

「ねぇ。リボーン。」

いつも異常になにやら嬉しそうな綱吉にリボーンという少年はどうしたんだとでも言うように目をしかめた。
ソファーに隣同士で座っている。リボーンから見る綱吉の横顔はそれはそれは美しかった。

「雲雀さんと骸に会って思ったんだけど、オレ。やっぱりマフィアになってよかったよ。」

突然の言葉にリボーンは一瞬驚いたがクスっと笑いが出てきた。

「なんだ今更。オレに感謝の言葉でもくれるってのか?ダメツナ。」

からかうつもりで言ったつもりだったが、綱吉は真剣な表情でこちらを見てきた。
不覚にもどきっとして綱吉に魅入られてしまう。



「・・・そうだよ。ありがとね。リボーン。」



ぎゅっと抱きしめられる綱吉の手はかすかに震えていた。
その意味が分からずにリボーンはただ綱吉に支えられながら身体を預けた。





「明日・・オレは・・・。」

リボーンを抱きしめる綱吉の腕に力が入った。


綱吉の言葉が耳元に聞こえる。


「・・・・・・"エリカ"になると思う・・・。」


そういって綱吉は離れてリボーンに優しく微笑んだ。

何が言いたいのかと読心術を使おうとするがどうも上手く読み取れなかった。

ただ、その言葉の意味を知ったのは真っ青に晴れた、清清しい朝だった。










次の日、約束をした日の朝。
綱吉を起こそうとボンゴレの執務室に行った。
いつもなら綱吉のベッドで一緒に寝るが、昨日は夜中の仕事があったのでそれは出来なかった。
リボーンは寝不足のせいか欠伸をしながら執務室をノックした。
しかし何回やっても返事がないので仕方なく鍵の掛かったドアを容易く開けて中に入った。
執務室に入ってもう少し進んだ所にボンゴレボスの寝室がある。
リボーンはゆっくりと寝室に向かってあるいた。
そこであることに気付いた。

綱吉の寝息が聞こえない。
いつもなら聞こえるのに。


かすかに寝室の扉が開いている。
不安が過ぎって勢いよく扉を開けた。




「・・・ツナ?」




そこには丁寧にベッドの上に畳まれたシーツと綱吉のパジャマがあるだけで綱吉の姿は何処にも無かった。
寝室の奥にあるシャワールームにもいない。
何処の窓を見ても鍵は掛かったままだ。

どういうことだ?


どの部屋も鍵が閉まっていた。
窓ガラスを割った形跡も無い。
ダレカが侵入した形跡も無い。
ただ、綱吉がおきて、部屋に鍵を閉めて出て行った形跡しかない。


屋敷の中でうろうろしているのだろうか?

そう思いながらチっと舌打ちをして部屋を出た。


それでも不安が取れなかった。
こんなこと初めてだからだ。

通常綱吉はリボーンと出かける日は絶対に部屋で待っているのだ。
なのに待っていないなどと。
おかしい。



リボーンは屋敷中を探した。

そんな中、ばたばたと慌てた様子で獄寺が来た。

「どうしたんだ?獄寺。」
獄寺の様子に何事かと目を見開いてリボーンは問いかけた。
獄寺は必死に呼吸を整えてリボーンに一枚の紙を渡した。





「・・・これは・・・・・・・・・。」




その手紙を見た瞬間、リボーンは脳裏にある自分の知識を思い出していた。
そうして、綱吉が昨日放った言葉の意味を理解した。





「・・・・・・ダメツナが・・・・・・・・・。」











太陽が眩しく、花々が美しく輝いている。
リボーンはフっと笑って数ヶ月前の出来事を思い出していた。



あの日、お前はオレに止めてほしかったんだろう・・・・・・。



『・・・・・・"エリカ"になると思う・・・。』


なぜあの時、お前からその言葉を聞いた時気付かなかったのだろうか。

『エリカ』

それは花の名前だということに。
そしてそのエリカの花言葉は【裏切り】だということに。



そう。綱吉はリボーンと出かける約束をした日に、ボンゴレ本部を抜け出した。つまり失踪したのだ。
ボンゴレボスが失踪。これは裏切りを意味するのだ。
綱吉は花言葉で間接的にリボーンに事前に告げていた。
かすかな助けを求めて。
だけどソレは叶わなかった。


それから一ヶ月も経ったが未だに綱吉は見つかっていない。





リボーンはポケットに入った紙切れを取り出した。
そうして握りながら足元にある花を見ていた。



「・・ツナ・・・。デージーって花は赤と白の色があるんだ。対象的な色だ。オレとお前みたいじゃねーか?なぁ。」


リボーンはしゃがんで花に触れた。
昨晩降った雨の滴が指に触れて少し冷たかった。

「此花は【day's eye】語源で、花芯の黄色を太陽に見立ててんだぞ。 ホントにお前にそっくりだ・・・。」



そうして紙切れを見つめる。
その紙には一ヶ月前にリボーンへ書かれた綱吉からの直筆だった。



「・・・こんな紙きれで・・・・。伝えきれると思ったのか?ダメツナが・・・・。」





リボーンは立ち上がって紙切れを丁寧に畳んでしまった。



「お前を必ず見つけて、殴ってやるからな。ダメツナ。」







デージーの花言葉は【愛のものさし】





俺が本当に愛を指し示してやるぞ。ダメツナ。












【親愛なるリボーンへ。 ずっと愛してる。ごめん。  沢田綱吉】







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あ り が と う ご ざ い ま し た !!!

まさかこんな展開になるとは!
読み終わるころには戦慄でした!
最後きっちりリボツナで終わってるのが嬉しいいいいい

本当にありがとうございました、これからもよろしくお願い致します!