「お、お、おおおおお」

「どうした?感動して喋れねーのか」

「おおおおおおお!!!」

 

目の前には『チョーかっこいー』『バリかっこいー』と賛嘆されまくりで有名な、帰国子女の顔があった。

こんなに間近で見たのは二回目である。初めは数日前、講義の時。そして今。

切れ長で涼しげな目元。めっちゃ長い睫毛。通った鼻筋。薄い唇。タレ眉と変なモミアゲ。

 

「何、惚れた?」

「!!!」

 

無意識に、右腕を繰り出していた。容姿端麗な男の、真白い頬へと。

 

 

 

 

 

 

 

(やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい!!!)

「沢田さん?」

「ごごごご獄寺くん、お、おれ」

 

 

件の男は、色んな意味で有名であった。

外見に似合わず暴れん坊だとか。何やら怪しい界隈に出入りしているとか。ひっそりと潰された人間は数知れずだとか。

どこからそんな噂が立ったのかは不明だが、火の無いところに煙は立たぬだ。

 

綱吉は確信した。

(確実に、ぶっ殺される!)

 

何で自分のことを知ってるんだとか、真夜中の変態じみた電話は何なんだとか、ていうか何で連絡先知ってんの?とか、疑問はすでに吹っ飛んでいた。

慌てて体を支える獄寺の手を押さえ、綱吉は顔を上げて―――――

 

 

がっしと顎を掴まれた。

 

「ぎゅ!?」

「あ゛?」

「ツーナ」

 

気持ち悪いくらいに蕩けそうな声。

 

つ、となぞられる、唇。

 

「、っ」

「よさそーな顔」

 

 

舌なめずりした変態はまるで悪魔のようだ。

男越しに見える女子大生たちがうっとりと頬を染める姿に、綱吉は気が遠くなりかけた。