どん。 響いている。音。でかい。 また、崩れたのだろうか。 綱吉は僅かに見える空を見上げながら、ぼんやりと思った。 「近いな」 傍で声が聞こえた。最強の、家庭教師だ。 腕を動かそう、と思っても、ぴくりとも動かなかった。 「リボーン、無事か?」 「俺を誰だと思ってる」 不服そうな声に、少しだけ悔しげな色が混ざっていた。 いつもなら余裕のある顔で立ち回るはずなのに、動く気配も見せないのは、きっとどこか、負傷したのだろう。 無事だろうか。 (みんなは、) いろいろな顔が、浮かんでは消える。 一時間前から突然起こっている天変地異は、止むことを知らないらしい。 その証拠に、分単位で不吉な轟音が耳に届く。 轟音、悲鳴、すすり泣く音、壊れかけたテレビが戸切れ途切れに伝える情報。 辺りの様子は全くわからない。今、自分は埋もれている。 我が家が崩れたのは、つい先刻だった。 二階の自室で、久しぶりにゲームをしていた。 傍には、呑気にエスプレッソを啜っている家庭教師がいた。 いつも通り、過ごしていた。 本当に、いつも通りだったのだ。 さっきまでは。 だんだんと、手足の感覚が無くなっていくのを感じながら、綱吉はふと、笑いが込み上げてきた。 「・・・・・・・・・・・・・っ」 「余裕だな」 「・・・・はは、だって、こんなん想像もしてなかったぜ」 「何がだ」 「まさか、こんなに早く終わっちまうなんてさあ」 世の中は理不尽だ。それが幾重にも積み重なって、さも真っ当なものかのような顔でのし歩く。 人はそれを勘違いし、気付き、憤り、諦め、受け入れる。 あまりにも弱い存在だ。抗うことすら、かなわない。 死。 世界が崩壊してゆく音を聞きながら。 「最後がお前とで、良かったよ」 「俺はゴメンだ」 綱吉は笑い、瓦礫の隙間の小さな空を見た。 場違いに、清清しいほどに雲ひとつ無い、澄み切った空だった。 |