上司と部下
次々に開けられていく酒瓶。
一体何処に隠し持っていたんだと言いたくなる程大量の酒は、種類も様々だった。
豪快にグラスを空けていく同僚達を眺めながら、酒に強くない綱吉は曖昧な笑みを浮かべて最初に乾杯した時から手に持っているグラスの中身をチビチビと啜った。
既に出来上がった男達は肩を組んで歌い始め、まだまだ余裕のある連中はここぞとばかりに未開封の高い酒に手を伸ばす。
今は現地で最後の自由時間。
彼等は間もなく快適な故郷へ帰還する予定だ。三ヶ月続いた不便な土地での任務の終了は彼等の開放感に拍車を掛けた。
この宴会だって「折角だから酒盛りでもしよう」と何人かが言い出したのが切欠だが、結果として短期間滞在しただけの異国で大した用事のある者は居ないので最終的に基地にいる全員が参加してのどんちゃん騒ぎとなっている。
アルコールの臭いと陽気な笑い声が充満した部屋は、酒の席特有の熱気が籠っていて暫くすると頭がクラクラしてくる。
少し外へ出て新鮮な空気を吸おうと、綱吉は立ち上がった。
ドアの近くへ行くとそこには険しい顔をした上官が立っていた。
ドア付近の壁に凭れて室内を眺めるコロネロの手にもグラスはある。
口を付けていないらしいそれの中で、琥珀色の液体が僅かに揺れた。
綱吉が何とも無しにその様子を眺めながら近付くと、グラスが持ち上げられた。
(あ)
琥珀の液体を一気に飲み干す喉は年下とは思えないほど逞しく、色気がある。
空になったグラスを置くとコロネロは「話がある」と綱吉の腕を引いた。
コロネロと綱吉が部屋の外に出た瞬間。
それまでバカ騒ぎをしていた男達はピタリと動きを止めた。
「行ったな」
「遂にか」
「大佐! 頑張ってください!」
屈強な男達は小声でヒソヒソと囁き合うとその場で扉へ向かって敬礼した。
***
「お話とは何でしょうか?」
畏まった口調で見上げてくる部下の姿にコロネロは戸惑った。
これから話すのは極めて私的な――要するに愛の告白と言うヤツである。
只でさえ言い出しにくい話なのに、こんなに真面目にされると益々言い難くなる。
いつの間にか、コロネロの必死に秘めていた筈の想いは部下全員(但し当事者である綱吉を除いて)に知れ渡っていた。
帰還命令が出た直後、衝撃と羞恥ですっかり固まったコロネロへ部下達は「飲み会やるんで、その時に勢いでプロポーズしちまったらどうですか?」「ハッキリ言わなきゃ伝わんないスよ」「大丈夫ですって。大佐なら大抵のヤツぁ落ちますから」と口々に言い募った。
しかし折角のお膳立ても、綱吉があまり呑まなかった事で早くも破綻し掛けていた。
「あー…」
(何言えばいいんだ?)
上手い言葉が出てこない。
告白すると決めた時からずっと考え続けて今に至るのだが、残念ながら本番になれば自然と言葉が出てくる、なんて奇跡は起こらなかった。
そもそもコロネロは告白をした経験が無い。
された事はあるが、自分から行動した事は一度もなかった。
暫く唸りながら迷った後、誤魔化すように頭をかく。金糸のような髪が揺れた。
「お前…、帰ったらどうするつもりだ?」
「どうって……ええと、配属命令が出ないと何とも」
「俺は故郷へ帰ろうと思っている」
「はあ」
「地中海の南にある島で、中々いい場所だ。既に退役届は出している」
「えっ!? あ、あのっ。大佐、軍を辞められるんですか!?」
「ああ。向こうで探偵事務所のようなものを開こうと思ってる。まあ、場所が場所だから忙しくは無いだろうが、今はネットワークが発達しているし、交通の便は良い場所だから食い扶持位何とでもなるだろう」
コロネロにはかなりの資産がある。
しかも中々の高給取りであるコロネロは、今まで仕事ばかりで使う機会が無くて預金は溜まる一方だったので、それだけで慎ましく暮らす分には充分だった。
「…それで……お前、一緒に来ないか?」
思い切ってストレートに口に出せば、案の定綱吉は目を見開いて固まった。
元々大きな目が更に大きくなっている。
何も言わない綱吉にコロネロはたじろいだ。
(言い方がマズかったか!?)
コロネロが悶々としていると、ゴクリと唾液を飲み込んで綱吉が口を開いた。
「そ、それってどうゆう…」
「そのまんまの意味だコラ」
「あの、俺。俺じゃ大佐のパートナーに相応しく無いと思うんですけど…何で俺、なんでしょう?」
「俺はお前しか考えられねぇんだ……嫌か?」
拒否では無く、戸惑いの形で問われた言葉にコロネロの胸が高鳴った。
「いえ、その。光栄です、俺でいいのなら」
「本当か!?」
「はい。あ、大佐。これからよろしくお願いします」
ぺこりと日本人の習慣で頭を下げる綱吉、コロネロはその肩をしっかりと掴んだ。
互いに緊張でぎこちなくならないように気を付けながら、笑みを浮かべる。
「絶対に幸せにするぜコラ!!」
(ん?)
コロネロの最後のセリフに若干違和感を覚えたが、綱吉もまた予想外の展開に興奮気味だったので、直ぐに違和感は高揚した気持ちの中へ消えてしまった。
(あの大佐が俺を相棒に選んでくれるなんて!)
綱吉はコロネロを尊敬していた。この先新しい部隊に配属されたとしても、きっと彼に勝る上司なんて居ないだろう。
能力的に言葉では相棒と言っても、対等な関係ではないだろう。
綱吉は一刻も早く彼に追い付いて背中を預けてもらえるようになろうと決意した。
「連れ出して悪かったな」
「いいえ。外の空気吸おうと思ってたんで丁度良かったです」
「戻るかコラ」
「はいっ」
自分たちの会話が角度で言えば30度程ズレている事に、笑顔で並んで歩く二人はまだ気付かない。
きっと真相が分かった時、二人の間で何かが変わるだろう。しかし、それが吉と出るか凶と出るかは誰にも分からない。
「コロネロでいいぜ! 敬語もいらねぇぞコラ!」
「じゃあ、俺はツナでいいよ」
しかし人生は結構上手くできているものだ。
きっと何とかなるのだろう。
「ツナ、よろしくな!」
「こっちこそよろしく、コロネロ!」
≫≫≫
だあああああああああああああああ!!!!!!あああああああああああああああああ!!!!!
ありがとうございました、ありがとうございました!!!!!
こんな、こんな・・・・・・・・
茅さん、ほんとーにありがとうございました!!!もう、メールボックス見た時点で憤死しました(絶叫しながら)
もう土下座しかできない
ていうか
コロツナしか見えない・・・・・・・・・!!!
三度!ありがとうございました!!