落ち込んで、リボーンに「ウザい」と蹴られながら準備をしていた綱吉は、玄関で気合を入れた。
(獄寺君はたぶん、オレに気付いてなかったし!別に、アレは人間として子孫を残すための本能だし!)
おっしゃ!と自分に一声かけながら、綱吉は家を出た。
「じゅじゅじゅじゅじゅうだいめ!」
「(うわ早速会った!)ごごごごごくでらくんおはよう!今日もいい天気だね!」
綱吉はまともに焦った。だが、獄寺はそれ以上に落ち着きを無くしていた。
二人の距離は不自然に空き、オイルが切れたロボットのようにぎこちなく歩いていた。
妙な沈黙に耐え切れなくなった綱吉は、話しかけることを決意した。
「ご、ごくでらくん!」
「は、はい!」
獄寺が飛び上がった。
「(えーと、呼んではみたものの・・・!)えーと、き、昨日」
「!!」
「(あ、墓穴だ、オレのバカ!)あ、やっぱ何でも」
「十代目!」
「は、はいぃ!」
「昨日は・・・すいませんでした!目に毒なものをお見せしてしまって・・・!」
「!(バレてるぅぅ!)」
「こんな事、俺が言うのもどうかと思うんですけど・・・忘れて下さい!」
「うん、大丈夫だよ!オレ、全然気にしてないし!」
ねっ!と無理矢理笑顔を作りながら、綱吉は両腕をぶんぶん振り回した。
(十代目・・・なんてお優しい・・・)
綱吉の笑顔に癒されながら、獄寺は決意した。
(もう、あの女とは別れよう。俺は一生十代目のためにこの身を捧げるんだ!)
そして、夢の出来事を心の中で謝った。
(すいません、十代目。もうあんな夢、絶対見ません!)
放課後、校舎裏にて。
「ごめん、別れよう」
「え・・・」
待って、なんで、行かないで、と後ろから悲痛な声が聞こえてきたが、獄寺は振り返らずに去った。