並盛高校文化祭。
外部の人間がたむろし、風紀委員は絶好の活躍の場である。
屋上で風紀委員長が学ランをたなびかせていた。
「沢田君ー、一番テーブルにこれ追加ー」
「は、はーい」
綱吉のクラスは喫茶店だった。男子はウエイター、女子はウエイトレス、腕のいいやつは厨房。
獄寺は当然ウエイターだった。山本は厨房に入っていたのだが、女子生徒の強い要望でウエイターに転身した。
顔の良い獄寺と山本のおかげで、女性を中心に結構な繁盛ぶりで、委員長が非常に満足げだ。
「これは左うちわだなフハハハハ」と怪しげに笑っていたのをたまたま聞いた綱吉は、『キャラ変わってるよ・・・』と
ビビっていた。
「よーツナ」
「あ、コロネロ!」
金髪碧眼の友人が廊下から覗き込んでいた。
「おー、似合ってるじゃねえかコラ」
「へへ、ありがとー」
綱吉の現在の格好はウエイターだった。なかなか様になっている。
「コロネロ達のとこって何してんの?」
途端、コロネロの目が泳ぐ。
「・・・・・メイド喫茶・・・」
しかも男子が女装してるらしい。
「まじで!じゃあリボーンも!?」
綱吉がからかうような目つきになった。
「いや、アイツはバッくれた。今頃どっかで酒でも飲んでんじゃねえか?缶ビール持ってたからな」
(何堂々と飲んでんだよ・・・)
リボーンは昔から酒に強かった。が、ある一定量を飲みすぎると壊れる。そして、わけのわからない行動に出るのだ。
(酔わなきゃいいけど)
「ちょっと!コンテスト始まるよ!」
「きゃー、まじで!?」
「今年のミス誰かなー」
「やっぱ京子じゃない?」
「ミスターは当然」
「リボーンさんよねー!」
ざわざわざわ。キャアアア!バタバタバタ。
女子生徒が駆け込んできたかと思うと、あっという間に皆体育館の方へ消えていった。
「え、なに?どしたの?」
「え、沢田知らないのか?ミスター並盛とミス並盛を決めるステージが一時からあるんだよ」
「投票とかしなかったの?」
「あ・・・してない」
え、じゃあもう皆体育館入っちゃうの?喫茶店は!?
アタフタする綱吉の周りから、どんどん生徒が消えていく。
あわててエプロンを脱ぎ始めた時、廊下から女子生徒の声が聞こえた。
「ミスターとミス同士で、最後キスするんだってー!」
(ま、まじで!!)
なんてお約束なんだ。
親友は校内一のカッコいい男。好きなオンナノコは校内一の可愛い子。
キスをする二人、それを草葉の陰から見守るオレ。
(い、行きたくねえ・・・)
そんなシーンなんて見てしまったら、オレは一生立ち直れない!
「沢田さん、体育館行かないんスか?」
「うお!」
いつの間にか、背後に獄寺が立っていた。
「行きましょうよ!皆行ってるし」
「で、でもオレ・・・」
遮って、山本が声をかける。
「もしかしたらリボーンもいるかもしれねーんだろ?いこーぜ!」
「え、ええええ」
綱吉は、二人に引き摺られるように体育館へと向かった。
中に入ると、ちょうどミス一位の発表だった。
『それではいよいよ!第一位の発表です!!!栄えあるミス並盛は・・・二年の笹川京子さんー!!』
うおおおおおおお!!!男共の雄叫びが轟いた。
『笹川さん、ステージに上がってきてくださいー!』
京子が照れながら舞台に上がった。ライトアップされた彼女の顔は、キラキラと美しく輝いている。
(・・・ああ、京子ちゃん、可愛いなあ・・・)
綱吉はうっとりした。
『続きましてー、ミスターの一位は・・・沢田リボーン君!!』
綱吉はずっこけた。なんだ、『沢田』って!
しかし誰もつっこまない。(もしや、皆そう思ってんのか?)
きゃああああああ!!!女子の歓声が響き渡った。男子のソレよりも体育館を揺るがしている。
『リボーン君、上がってきてくださーい。リボーンくーん?』
司会が呼びかけるが、リボーンは上がらない。
体育館がざわめき始めた。
だろうな、と綱吉は思った。
リボーンはこういうのあんま好きじゃないんだ。しかも飲んでるんだったら舞台に上がれるわけないし。
京子とリボーンのキスシーンを見なくてすむ、と安堵の溜息をついた。
が。
『リボーンくーん、リボ・・・あ、来ました!』
「えええええ」きゃああああああああああ!!!!
綱吉の声は喜びの悲鳴に掻き消された。
リボーンはしっかりした足取りでステージの中央に歩み寄る。
そのオーラの輝きに、様々な場所から、ほぅ、と溜息が上がった。
『お二人とも、おめでとうございまーす!』
綱吉には、やたらと陽気な司会者が憎らしく思えた。
袖に立っていた女子生徒達が、二人に花束とトロフィー、『豪華商品』と書かれた封筒を渡していた。
『それではお待ちかね!並森のミス・ミスターによる、恒例のキスタイムでーす!!』
おおおお!再び歓声が上がった。いやああああ!と悲鳴もあちこちから聞こえる。
綱吉は思わず目を瞑った。
キース!キース!とキスコールが起こる。
もーやだ、やめてくれ。
リボーンがキスだなんて。
あれ?
オレ、誰に妬いてんだ?
思わずぱちりと目を開けると、
絶妙のタイミングでリボーンと京子の顔がくっついていた。
ガーン。