「はい、リボーン、あーん」
ばくり。
「おいしい?」
「ああ」
「そう、次はこれ食べる?」
何だ、このミルクティーにシロップ五つも混ぜたような甘いオーラは。
綱吉はげっそりと、そして微かにイライラしていた。
眼の前にいるのは男と女。
一人は旧知の間柄であるお隣の幼馴染。
そして、もう一人は。
「さあさ、ビアンキちゃん、たくさん食べてねー」
「ありがとう、奈々」
(人の母親呼び捨てにすんなよ!)
イタリアから来た獄寺の姉だ。
先日、下校中にいきなり現れたビアンキを見た瞬間、獄寺は泡を吹いて倒れた。
何やら幼少のトラウマで、以来実の姉が大の苦手らしい。
仕事のついでに弟の顔を見に来た、という彼女は、その場にいたリボーンに声をかけた。
「リボーン、久しぶり」
「ああ」
「え!知り合い!?」
獄寺を介抱していた綱吉は、突然の会話に驚きを隠せなかった。
「まさかこんなところで貴方に会えるなんて、運命だわ」
「俺は昔からずっとここに住んでるぞ」
二人は綱吉を無視して話を進めている。綱吉はムカッときた。
「また一緒に仕事したいわ。手伝ってくれない?」
「俺はここではそういうのはしないことにしてんだ」
「・・・・・・ねえ、仕事って」
「イタリアへ行きましょ?貴方には平凡な世界は似合わない」
「結構気に入ってるんだがな」
「・・・・・・・・・・・・・ねえ」
「貴方のセクシーな闘い方、眼に焼きついて離れないの」
「まさかお前に褒めてもらえるとはな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
綱吉は、リボーンの腕を思い切り引っ張った。
「ねえってば!」
「・・・・何だ?」
二人が同時にこっちを見たので、綱吉は何だか居心地が悪くなった。
「その、あの」
「ビアンキ」
察したのか、遮ってリボーンが促す。
「初めまして、隼人の姉のビアンキよ」
「はあ、どうも・・・・・」
綱吉はビアンキの顔を見た。改めて見ると、とても綺麗な顔立ちをしている。
瞳は大きく、鼻筋もスッと通っていて、唇は綺麗な赤色だ。どことなく獄寺に似ている、と思った。
「ねえ、リボーン、今夜泊めてくれない?」
ぶっ!
ビアンキがいきなり爆弾発言をかましたので、綱吉は噴出した。
「な、な、」
「ああ、どっちでもいいぞ」
「!(えー!!!)」
「じゃあお邪魔するわ」
「あ、あの、あの」
「?」
「・・・オレの家に泊まってください!!」
微妙な顔をするビアンキを、「美味い飯があるから」と説得し、泊まってもらうことになったのだ。
リボーンは何だか複雑な顔をしていたが、「どーせリボーンも飯食うんだから一緒にいればいい」との綱吉の言葉に従い、
しばらくは毎日お泊り状態ということになった。
綱吉は非常にもやもやしていた。
(なんで人前でそんなくっ付いてばかりなんだよ!)
しかし、これでリボーンの家に二人きり、という状態にするのは、もっと嫌だった。
(目の届くところにいないと・・・!)
なんだろう、この嫌な感じ。二人を見てると、非常にイライラする。
(・・・・・オレ、こんなに嫌なやつだったんだ・・・)
自分の気持ちへの不可解さと、二人への気持ちの醜さに、綱吉は溜息をついた。
綱吉は憔悴していた。 ここ数日、ビアンキは当たり前のようにリボーンにべったりだった。
寝るときは布団に潜り込もうとするし(綱吉は全力で阻止した)、なぜか並高の制服を着て学校に侵入してはリボーンの
腕に絡みつくし(これも全力で阻止)、何よりやたらとキスしたがるのだ!
綱吉はその度に「あ、二人の間に蜂が!」とか言って、割り込んでいた。
たまに獄寺とビアンキが顔を合わせてしまい、綱吉が介抱する、というのも、ここ数日のセオリーとなっていた。
(なんでオレ、こんな神経張ってんだろ・・・)
自分で自分の行動の起因がよくわからぬまま、綱吉は何かを見つけてハッとなり、ダッシュで廊下を走っていった。
「リボーン・・・」
「あっ!こんなところにガッ●石松虫が!危ない!」
ちょうどリボーンにキスするところだったビアンキの額と、何もせず突っ立っていたリボーンの口を押さえ、綱吉は
割り込んだ。
「・・・・・・・・・・ちょっと沢田綱吉、貴方、この前から何なの?」
さすがにカチンときたのか、ビアンキが仁王立ちになって綱吉を睨みつける。その迫力に綱吉は後退した。
「私の愛を邪魔すると、いくらリボーンの幼馴染でも容赦しないわよ」
「い、いやあの、すいません!」
「・・・・・・・・それとも貴方、もしかして・・・・」
ドキッッ!!
「私のことが好きなの?」
「・・・・・・・・はああ??」
綱吉は呆気に取られた。
「そう、そうだったのね。だからリボーンに愛を誓う私を見ていられなくって、二人の仲を裂こうとしていたのね」
「いや」
「だけどもう決めたの。私の心はリボーンに捧げるって」
「あの」
「悪いわね。貴方の気持ちには応えられないわ」
「聞けよ!」
リボーン何とか言ってくれ!
そう言おうと綱吉は彼の方を振り向いた。 そしたら。
「・・・・・・・・・・・り、りぼーんさん・・・?」
「・・・・・・・・・・・リボーン?」
「なんだ」
(いや、「なんだ」って、お前が何なんだよ!)
何だか静かに怒っている幼馴染が、踵を返して去っていく。慌ててビアンキが追っかけていった。
「・・・・・・・・・・なんなんだよ」
後には一人、やるせない思いの綱吉のみ残された。