「ただいまー」
「お帰り」
オートロックのドアを閉め、広い玄関にキチンと靴を揃えた綱吉は、すぐに続くリビングへと足を向けた。
広々とした部屋の真ん中に、シックなグレーのソファがデンと置かれており、そこには後見人が寝そべって夕刊を
読んでいた。
頬にキスを落とす。かなり恥ずかしい。
だが、これは家族になった時に後見人から出された唯一の条件だった。
『挨拶は必ず頬にキスを』。イタリア人の血はわからない。
頬っぺた当てるだけでいいんじゃなかったっけ?綱吉は未だ疑問に思っている。
リボーンは涼しい顔でキスを返す。これも未だに綱吉は慣れなかった。
「リボーン、今日も仕事ないの?ていうか、リボーンってほんと何やってんの??」
「企業秘密」
男の顔は再び新聞に隠れてしまったため見えなかったが、絶対『ニヤリ』としてる、と綱吉は思った。
「今日のメシはなんだ?」
「今日はねー、オムライス」
「・・・また卵料理か」
「いいじゃん!なんとか焦がさずに出来るようになったんだし!」
やれやれ、と溜息をつきながらも、リボーンは立ち上がった。
きっと、今日も「スパルタ教育」の名の下に、びしばし厳しいしごきをされるのだろう。
でも、徐々にではあるが、生活する上で必要なことを身につけていく自分がわかる。
この大人は、何だかんだ言っていつも優しい。
綱吉は、知らず笑みを浮かべた。
あれから、どういう手段を使ったのかは知らないが、次の日にはリボーンの後見を受けることになっていた。
綱吉は初対面の男がいきなり後見人を名乗り出たことに戸惑いを隠せなかったが、どこかでほっとしたように感じた。
親戚とは元々付き合いの良い方ではなかったし、男の雰囲気は嫌なものではなかったからだ。
男は、自分の名前を名乗ったきり、それ以上の情報を教えてはくれなかった。
だが、住まいがワンフロアに一世帯という『ものすごく高級そう』なマンション(億ションの可能性大)であることから、金に
不自由はしていない、くらいのことはわかった。
一緒に暮らし始めて一ヶ月ほど経つが、男が「仕事だ」と言って留守にするのは、今までで2、3回有るか無いかである。
しかも夜。
多少怪しいとは思ったが、悪いやつではないようだし、まあいっかと綱吉は楽天的に事を受け入れていた。
食事の最中、ふとリボーンが尋ねた。
「そういや、授業参観って来週だっけか?」
綱吉は思わず食べ物を吹き出した。
リボーンが顔を顰める。
「おーおー、何やってんだ、汚ねえぞ」
「、う、ごほ、ちょ、ちょい待って」
(何で知ってるんだ!プリント捨てといたはずなのに!)
水を飲み下しながら、綱吉は焦った。
もともと、こういう行事は好きじゃない。
勉強があまり出来ないため、その日の夜はいつも奈々に小言をくらっていた。
しかも両親はもういない。別に来なくてもいい、と思った。
「俺はお前の後見人だぞ」
リボーンは当然のように答える。
「だってオレ、頭悪いし、当てられても絶対答えられないよ!幻滅するよ!」
「大丈夫だ、もし答えられなかったら、帰り次第2時間の復習で勘弁してやる」
「げええ!よしてよ!」
リボーンに幻滅されるのは嫌だ。
だが、こうやって『家族』の誰かが来てくれる、ということは、思いの外、綱吉の心を温めた。
「あと一週間はあるじゃねえか、必死で勉強しろよ」
テーブル越しに独特の『ニヤリ』笑いを投げかけられる。
久しぶりに、机に向かおう、と思った。
おまけあります。
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