さあ寝るぞ!と勢いよく布団を被った瞬間にケータイが鳴った。

おい、マジかよ。今、三時過ぎじゃねえ?

友達も少ないし、その中に非常識なヤツも見当たらない。

(・・・・・・・・・・・・・・・寝よ)

 

ブルル、ブルル、ブルル、ブルル、

 

しばらくすると止まったので綱吉は息を吐いた。申し訳ないです、誰かさん。でもオレはもう限界なのです。さっきまで見ていた深夜映画にヤられてしまったのです、ひつじの顔したおじさんがあどけない少年たちをどんどん殺していくやつだったのですが消してしまえばいいものを最後まで見ちゃったばかなオレ『ブルル、ブルル、ブルル、ブルル、』

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

眠い頭でケータイに手を伸ばす。ディスプレイには「非通知電話」の文字だ。怪しさ爆裂。

だが綱吉は通話ボタンを押した。

 

ピッ。

 

「・・・・・・もしもし」

『チャオ』

 

やたらと陽気な挨拶に綱吉は顔を顰めた。声も全く心当たりが無い。

「あのー、間違い電話だと」

『お前沢田綱吉だろ?』

合ってる。

「どなたですか・・・・・・・・てゆーか、今何時だと思ってんスか」

『誰だと思う?』

電話越しの声はやたら楽しそうだ。苛々する。

自分をダメツナだとからかう類のものなのだろうか、と思い、通話をオフにしようとして、

『切るなよ』

という言葉になぜか指は止まってしまった。

「は?」

『話そうぜ、ツナ』

 

(き、気持ち悪い・・・・・・・・・!)

 

ブヅッ!

ツー、ツー、ツー、

 

「はー怖かった」

 

ケータイを放り出し、耳に残る声を削ぎ落とす。楽しそうだった声。低いテノール。

 

(あれ、)

 

どっかで聞いたような・・・・・・

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぐー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

綱吉は飛び起きた。

「やべえ!」

時計の針は、予定の起床時間を大分過ぎて指している。今日の講義は遅刻できないのだ、時間に厳しい教授なだけに!

どたばたと駆け回る音に、階下の大家さんが怒鳴る声が聞こえた。

「うるせえッ!」

 

 

 

「獄寺君!」

「沢田さんッ!」

凄いです!と目をキラキラさせて、綱吉の自称親友、獄寺隼人は腕時計を見た。ジャスト30秒前。これまでの記録からいえば、かなり良いほうである。

「家が近くて良かった・・・」

「お疲れ様です」

すいませんすいませんと言いながら席を詰めてもらう。座ったタイミングでメガネの教授が講義室に現れて、綱吉はふうーっと大きく息を吐いた。

その時。

目の前の後ろ頭がくるんと裏返った。

「!」

 

瞬時に俯いた綱吉に気付き、獄寺が心配気に声をかける。

「大丈夫ですか?気分でも・・・・・」

「平気」

生来のビビリなのだ。学内の有名人と目が合っただけで顔を逸らす小心者。それがオレ。

慌てて逸らしたせいで、それを見た前の男がニヤリと笑ったことに綱吉は気付かなかった。幸か不幸か。